量子科学技術研究開発機構(千葉市)は、体内で放射線を放ち、ピンポイントでがん細胞をたたく薬剤を開発した。がんを移植したマウスへの投与実験でがんの大きさが半分に縮小したとしている。
対象のがんは、副腎に発生する褐色細胞腫。国内では年間約3000人が発症するがんで、患者の大半は外科手術で治るが、1割は全身に転移して有効な治療法がなくなる。
研究チームは、同機構の高崎量子応用研究所(群馬県高崎市)などの加速器を使い、放射線の一種アルファ線を放つ元素「アスタチン211」を製造。褐色細胞腫に取り込まれる物質に組み込んだ。
褐色細胞腫を移植したマウスに1回注射すると、7日後までに半分の大きさになり、がんの増殖を約20日間抑えることができた。目立った副作用もなかった。
従来はベータ線を出す「ヨウ素131」が投与されていたが、アルファ線は周囲の正常な細胞への影響が少ないことが特徴だ。
チームの高崎量子応用研究所の石岡典子上席研究員は「7年後をめどに臨床応用を目指したい」と話した。