そもそも、モデルSを自動運転車と呼ぶのは誇大的かもしれない。国土交通省の定義では、自動化レベル1は「走る」「曲がる」「止まる」のうちの単一機能の自動化だ。一般的な運転支援機能である緊急ブレーキがこれに当たる。複数が自動化されたものをレベル2とし、先進高度運転支援システム(ADAS)と呼ばれる。あくまでも操縦の主体は運転者であり、安全を常時監視し事故への責任を持たなければならない。
レベル3は「半自動運転」である。通常はシステムが自動運転し、運転者が操縦を自ら行うのはシステムの要請があったときだ。そのような状況での事故責任がシステムと運転者のどちらにあるのか、現段階で法整備などが全く整っていない。レベル4は「完全自動運転」となり、運転操作、周辺監視をすべてクルマが操作し、当然、事故責任もシステムに帰属する。
モデルSはレベル1の出口かレベル2の入り口にすぎず、自動運転技術というよりは高度運転支援技術である。正しい知識と適切な運用がなければ事故は起こりうる。
利用者がシステムを過信し、不適切な運用に歯止めがかからなくなっていることが危惧される。自動走行技術は日本の国家戦略の一つ。業界トップのトヨタ自動車も、先陣を切って関連技術へ巨額の資金を投下している。そんな大ブームの中で、業界も消費者も警戒心が剥落しすぎてはいないか。クルマは一歩間違えばとんでもない凶器に化ける。