
インド・グルガオンで、オムロンヘルスケアの現地法人が開いた無料測定会に参加して血糖値を測る男性(右)=6月(共同)【拡大】
人口約13億を擁するインドで高血圧や糖尿病などの生活習慣病が急増する中、日本のメーカーが健康器具の市場を開拓しようと奮闘している。経済成長で拡大する中間層や富裕層の健康意識を高め、需要を掘り起こしたい考えだ。
暑さが和らいだ6月のある夕刻、首都ニューデリー近郊の北部グルガオンにある薬局の店先に中高年の男性らが集まった。健康器具大手オムロンヘルスケア(京都府向日市)の現地法人が電子血圧計や血糖計などを実際に体験してもらおうと開いた無料測定会だ。
生活習慣病の予防意識が低いインドの消費者に関心を持ってもらうのが狙い。参加した近くに住む50代男性は「思ったより体重も多いし、数値が悪い。健康に気を付けないと」と話した。
薬局の店主によると、売れ筋は1500ルピー(約2300円)の血圧計で、測定会でそのまま買っていく人も多い。測定会は全国で年間約2000回実施。製品を取り扱う薬局は2万店を超えた。
国際糖尿病連合によると、インドの糖尿病患者は約7000万人に上る。都市部を中心に中間層や富裕層の肥満が急増。インド料理で使われる油の多さや、伝統的に午後10時ごろ夕食を取る食習慣、屋外での運動を妨げるほどの過酷な気候も影響している。
米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、生活習慣病など非感染性疾患によるインドの経済的損失が2030年までに6兆ドル(約610兆円)に上ると試算。モディ政権も国民の健康向上を政策課題の一つとしており、オムロンの取り組みにも高い関心を示している。
オムロンの主要顧客層は中間層で、シェアは約55%。最近は中国勢との競争が激化しており、今後は金銭的に余裕が少ない層に浸透できるかも鍵となる。現地法人のオムロンヘルスケア・インディアの増田央郎社長は「ビジネスを通じ、インドに病気の予防意識を広げたい」と強調した。(グルガオン 共同)