「中国の消費パワーで世界を驚かせよう」。昨年11月、中国のネット通販大手「アリババグループ」が展開した特売セールで、最高経営責任者(CEO)の張勇氏はこう呼び掛けた。中国では、ネットの普及や決済システム、物流網の整備で、日本の商品をより購入しやすくなった。
日本の商品は安全面でも人気が高く、訪日客がネット上でリピーターとなり、口コミで購入者を増やしている。通販にも円高の影響はあるが、旅行費用がかからない分、消費者が商品に充てるお金は増やせる。
これを商機とみるのは、国内の運輸大手だ。日本通運はアリババと提携し、日本企業の商品を空輸するサービスを始めた。ヤマトホールディングスも今春、別のネット通販大手と提携。ANAホールディングスは9月から越境通販事業に本格参入する。
ただ、中国の通関制度が事業拡大の壁になっている。各社は通関手続きを代行するが、中国政府が徴税強化のために新たな申告システムを導入し、企業側の負担は増した。運輸大手の担当者は「中国の頻繁な制度変更に対応できないと、サービス自体が成立しなくなる」と警戒している。