ITを活用することによって、銀行の“専売特許”とされてきた企業融資への参入が容易になりつつある。
通販サイト「アマゾン」などで段ボール販売を手掛けるハイフンネットワークス(千葉市花見川区)は、わずか5人で切り盛りするベンチャーだ。アマゾンジャパン(東京)の融資を約2年半前から受けている。
アマゾンの融資の強みは、申し込みから2~3営業日で入金されるという銀行にはないスピード感だ。融資対象はアマゾンのサイトで商品を販売している事業者。日々の売り上げや顧客満足度などをITで分析し、融資可能額を決める。
ハイフン社は借りた資金を主に在庫の補充に充てている。同社の大久保博明氏は「在庫が切れた場合、突然資金が必要になる。柔軟な融資判断はありがたい」と話す。アマゾンの融資が後押しの一つとなって2015年の売上高は13年と比べて約5倍になった。
融資は銀行業務の中核だ。企業の財務状況や将来性を見極めたり、幅広い情報を顧客に的確に伝えたりするノウハウは一朝一夕には築けない。ただ最近、ITの発達によって審査や情報提供の能力が飛躍的に高まってきた。矢野経済研究所の推計によると、ネット経由で資金を集めるクラウドファンディングの市場規模は貸し付け型を含め、15年度に前年度比約44%増の約284億円(見込み)と急成長している。
融資形態以外に、ネットを介して事業者と投資家を結び付ける場を提供する企業もある。maneo(マネオ、東京)もそのひとつだ。マネオは資金を必要としている事業者から融資申し込みを受け、ネットを通じてファンドへの投資を募る。集まった資金を貸し付けて、投資家に利益を還元する仕組みだ。マネオ幹部は「銀行借り入れ以外の資金調達への需要は高まっている」と分析している。