シンガポールの投資ファンド「エフィッシモ キャピタル マネージメント」が川崎汽船の株式を買い増している。エフィッシモは物言う株主として知られた旧村上ファンドの出身者が設立したとされる。海運業界は不況のまっただ中にあり、エフィッシモが今後、大株主としてリストラなどの経営改善策を求め攻勢に出る可能性もある。
エフィッシモが関東財務局長に提出した9日付の大量保有報告書によると、保有する発行済み株式は2日に37.74%となり、直前の37.13%からさらに増えた。
目的は「純投資」としているが、昨年9月に6%超の保有が明らかになって以降、買い増しが続いている。議決権ベースで3分の1超を持つと合併などの重要議案を否決できる拒否権を持つ。
投資ファンドの攻勢が現実味を増す背景には、海運業界の業績低迷がある。新興国経済への期待から中国と韓国で船の建造量が急激に伸び、海運会社も運航する船を増やした。だが、中国などでは景気が減速して需要が落ち込み、運賃も低下した。
川崎汽船など大手2社は2016年4~6月期決算の最終損益で赤字を計上。特に川崎汽船は17年3月期に2年連続で多額の最終損失を見込んでいる。
エフィッシモは6月の川崎汽船の株主総会で村上英三社長の取締役再任議案に反対したとみられ、賛成の割合は56.88%にとどまった。川崎汽船の幹部は株価上昇で利益が出ない限り「簡単には売れないだろう」と指摘し、エフィッシモがリストラなどの改善策を提案する可能性を示唆する。同社はエフィッシモと対話の場は持っているという。
国土交通省幹部は「業界の今後を含め、両者がどう動くか関心を持っている」と話す。