経営再建中のシャープの戴正呉社長は21日、社員向けに送ったメッセージで、2016年度下期の業績黒字化を目指していることを明らかにした。戴社長は「(親会社の)鴻海(ホンハイ)精密工業との戦略的提携が本格スタートする下期の結果が、シャープ再生を左右する」と訴えた。15年度下期は1368億円の連結営業損失だった。
8月に鴻海の傘下に入って以降、徹底した経営効率化や、海外のテレビ事業の再強化などを打ち出し、一定の成果を挙げている。ただ、経営不振を招いた太陽光事業の再建など課題は山積しており、狙い通り黒字を達成できるかは不透明だ。
シャープは21日、リストラ策の一環として売却した大阪市の旧本社地区の「田辺ビル」を、NTT都市開発から買い戻すことで合意したことも発表した。戴社長は家具量販大手のニトリ(札幌市)に譲渡した「本社ビル」も買い戻す意向を示しているが、合意には至っていない。
また、欧州のテレビ事業でブランド使用権を供与しているスロバキア企業との間で、出資も視野に提携する方向で協議することで基本合意した。戴社長は「(ブランドを供与する事業は)あるべき姿ではない」と説明。将来的に自社製品による欧州再参入を目指す考えを強調した。
戴社長は社員向けメッセージで「全員一丸となって信頼回復を目指そう」と呼び掛け、事業部の枠を超えて企画や開発を行う「One SHARP」の意識を持つことを求めた。