アサヒグループホールディングスがベトナムの国営ビール事業の買収に向け、近く始まる入札手続きへの参加を検討していることが19日、分かった。業界では買収総額は2000億円規模とされ、海外ビール大手や投資ファンドも加わり争奪戦になる可能性がある。
アサヒは、成長が見込める海外市場に積極的に投資し収益の拡大を急ぐ方針を掲げており、英ビール大手SABミラーが東欧5カ国で展開するビール事業の買収も検討している。
入札の対象はサイゴンビール・アルコール飲料総公社と、ハノイビール・アルコール飲料総公社。ベトナム政府が国営企業の民営化を進める一環で、保有株式を売却する方針を打ち出していた。ベトナムは約9340万人の人口を有し、経済成長を背景に2015年のビール生産量は前年に比べて2割も増えた。アサヒ幹部は「魅力的な市場だ」と評価している。
東欧5カ国のビール事業の価値は5000億円程度といわれているが、激しい獲得競争で買収額がつり上がり、アサヒの想定を大幅に上回る懸念もある。アサヒは状況によってはベトナム案件を優先する方針だ。
ビールや発泡酒などを合わせたビール類の日本市場は、若者の酒離れなどで縮小を続けている。国内大手は海外展開を進め、キリンホールディングスやサントリーホールディングスはともに売上高に占める海外比率が4割近くに達する。
アサヒは先ごろ約3000億円を投じてSABミラー傘下の欧州ビール4社を買収したが、これらを含めても海外比率は2割弱にとどまり、競合他社と比べて出遅れている。