メキシコの自動車生産台数は2015年に340万台に達し、世界第7位に浮上した。20年までに560万台に増え韓国を抜き、世界第5位の自動車生産大国となる見通しである。この過半数が米国向け輸出である。この流れへ減速をかける政策検討は、起こりうるシナリオなのである。
米国販売の10%がメキシコ生産車に依存する現在の日本車の構造は、政治的プレッシャーを受けるとき、多大なリスクとならざるを得ない。メキシコを除く北米現地生産比率は、ホンダが90%以上で合格点だが、トヨタが65%、日産は50%程度に過ぎない。内向きに向かう米国市場に対し、望ましい地産地消のバランスはどこにポイントがあるのか。今一度、業界はこの古くて新しい命題を解かねばならない。
◇
【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。