実際にスズキは新型ワゴンRで月間販売1万6000台を計画。年間では19万2000台にのぼり、昨年のN-BOXの台数を上回る強気の目標を打ち出した。
ダイハツもN-BOXの追撃態勢を整える。昨年11月末にはタントを一部改良。歩行者との事故を未然に防ぐ衝突回避支援システムを搭載するなど安全性の高さをテコに反撃を狙う。
N-BOX包囲網は、ダイハツを傘下に置くトヨタがスズキと業務提携に向けた覚書を結んだことで、さらに強まる。国内軽市場でダイハツとスズキのシェアは合算で約6割に達する。スズキの原山保人副会長は「ダイハツとは軽市場で今後も切磋琢磨する」と話す。その関係は曹操に対抗するために同盟を結んだ孫権と劉備の関係と重なる。孫権と劉備が連合を組んだ赤壁の戦いでは、孫権軍の周瑜、劉備軍の諸葛亮の知略などで曹操軍を撃破した。ただ、N-BOX、タント、ワゴンRという軽市場での三国志では、そうなるとは限らない。
ホンダは年内にもN-BOXの全面改良を行う見通し。ただでさえ現行モデルの販売の勢いが衰えない中で、燃費などを改善する新型車が売れないはずがない。軽自動車の三国志はどのような物語が紡がれるのか、興味は尽きない。(経済本部 今井裕治)