
時速30キロで走行中、飛び出した人形の手前で停止したスズキの自動ブレーキ搭載車=2016年12月1日、茨城県つくば市の日本自動車研究所【拡大】
2018年中に損害保険各社の自動車保険が一斉に値下げになる見通しとなったのは、自動ブレーキ搭載車の普及や搭載機器が運転時の動きなどを日常的に分析する「テレマティクス」といった安全運転技術の普及が大きい。技術の進展で交通事故が減少し、保険金の支払いが減れば、自動車保険全体の収支が改善して、保険料のさらなる値下げも期待される。
ただ、各社の主力商品である自動車保険で保険料の値下げが続けば、将来的には収益の悪化も懸念される。
警察庁の統計によると、交通事故の発生件数は04年の約95万件をピークに減少が続いており、15年は約53万7000件と6割程度まで減少。その結果、近年は収支が改善している。14日に発表した損保大手3グループの16年4~12月期連結決算では、全社が過去最高を更新した最終利益の押し上げにも寄与している。
ただ、少子高齢化に伴う人口減や若者の自動車離れに加え、技術の進展で事故が減ることで、自動車保険そのもののニーズが縮小する可能性もある。センサーなどの精密機器を搭載している自動車も増えており、大手損保各社からは「事故1件当たりの修理にかかる金額は高騰している」「保険料の決め方が細かく決まっており、リスクがより細分化されると収益悪化につながりかねない」といった指摘もあがる。
契約者に安価な保険料で自動車保険を提供しつつ、過度な値下げ競争に陥らないために、商品開発やサービスの拡充などで各社の工夫も求められそうだ。(永田岳彦)