経営再建中の東芝による半導体事業の売却先が中国や台湾の企業になった場合に、政府が外為法に基づき中止や見直しを勧告するための検討に入ったことが23日分かった。データの保護など民間産業向けばかりでなく安全保障の面でも重要とされる技術の流出を防ぐ狙いだ。
ただ東芝は、米原発事業の巨額損失を埋めるため半導体事業をできるだけ高値で売りたい考えで、売却先の選定を制約しかねない政府の動きに神経をとがらせている。
外為法は、海外の企業や投資家が安全保障に関わる国内の事業を買収する際に、国の事前審査を受けることを義務付けている。政府は2008年に、英国系ファンドによる電源開発(Jパワー)の株買い増しに対し「電力の安定供給に影響を与える恐れがある」として中止を命じたことがある。
菅義偉官房長官は23日の記者会見で、東芝の半導体事業が雇用の維持や情報管理の観点から重要だとし、海外資本の参入について「十分に考慮して会社が判断する問題だ」と述べた。
世耕弘成経済産業相は22日の参院経産委員会で、東芝の半導体技術が企業などのデータセンターに使われた際に、データの破壊などの攻撃につながらないよう考慮する必要性を指摘していた。
東芝の半導体事業には約10陣営が参加する見通しだ。米ハードディスク大手のウエスタン・デジタル(WD)や韓国半導体大手SKハイニックスが意欲を示しており、シャープを傘下に収めた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のほか中国企業も応札の可能性があるとされる。日本勢として日本政策投資銀行や官民ファンドの産業革新機構などの参加を求める声もある。
鴻海など台湾企業は、主力の工場を中国に展開しており、政府関係者の間では警戒感が強い。