次に日本の会社がシンガポールの会社に定期的に支払う知的財産の使用料の金額が問題となる。こちらは知的財産の売却額とは逆に、金額を高くしたいとオーナーは考えるだろう。日本の会社の経費計上額が多くなり、シンガポールの会社の収入額が増える。つまり、日本とシンガポールの法人税率の差分の税金が減ることになるからだ。こちらも税務署は第三者との取引と比較しながら、価格の妥当性や支払いが適切か、などを詳しくチェックする。海外企業は、この使用料を利用した節税策を行う企業が多く、数年前に米アップルのケースがニュースで取り上げられた。日本企業の国際的な取引が増えるにつれて、税務署のチェックもより厳しくなってきている。
国際税務は留意点が多く、制度の変更も予想される分野である。常に最新の情報収集が必要となる。
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【プロフィル】岡野貴幸
おかの・たかゆき 立教大経済卒。2008年あずさ監査法人入社。製造業、石油業を中心に、法定監査、任意監査、内部統制監査などの業務に従事。12年ベンチャー企業に入社。14年岡野公認会計士事務所を設立し、現職。医療関係税務、M&A(企業の合併・買収)、不動産買い替えなどをサポート。31歳。埼玉県出身。