日立と東芝の最終損益の推移【拡大】
電機業界の名門としてしのぎを削ってきた日立製作所と東芝の明暗がくっきりと分かれている。東芝は不正会計問題、米原子力発電事業の巨額損失と不祥事が続き、存続の危機にひんする一方、日立はかつての不振から復活し、利益規模は国内電機大手でトップだ。ライバル2社にこれほどまでに大きな差が開いたのはなぜか-。
英国ウェールズ北西部のアングルシー島。英本土と鉄道・道路橋で結ばれ、首都ロンドンから特急列車で4時間ほどのこの島は、英国の保養地の一つで夏場は海水浴やキャンプをする家族連れでにぎわっている。羊や牛の放牧地が一面に広がる島の北部の一角、ウィルヴァ・ニューウィッドと呼ばれる1000エーカー(約400ヘクタール)ほどの区画が日立の計画する原発の予定地だ。
「島民が誇れる世界水準の原発にする。地元企業や若者に質の高い就労の機会の提供を約束する」。同社の原発開発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーのダンカン・ホーソーン最高経営責任者(CEO)は5、6月の住民公開ヒアリングでこう表明した。来年には建設認可が下りる見通しで、2020年代前半の稼働に向け計画は着々と進んでいる。
一方、東芝の綱川智社長は5月の記者会見で「英国政府も含めたステークホルダー(利害関係者)と相談して株式売却も含めて検討したい」と力なく語った。英北西部で原発新設計画を進めたが、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の巨額損失を受け、英国も含む海外原発事業から撤退せざるを得なくなった。