しかし、東芝とWDの交渉は8月末で行き詰まった。WDが東芝メモリの将来の経営権取得や、三重県四日市市の工場で生産される半導体の配分割合引き上げなど、過剰な権益拡大を求め譲らなかったからだ。時間的な猶予がない東芝の弱みにつけ込むWDの姿勢に、東芝は「もう信用できない」と東芝関係者らは不信感を強めた。
WDへの反発は東芝だけではない。東芝メモリの主要取引先である米アップルなど米IT有力企業も、相次いでWDによる買収に懸念を示し、日米韓連合へ参加した。過去にWDは、アップル向けのメモリー供給を絞り、取引価格を値上げした経緯がある。アップルは、WDが経営の主導権を握った場合、将来の発注をやめる選択肢もあると伝え、売却交渉で日米韓連合が再び優位に立った。
反WD包囲網が固まり、態勢が日米韓連合に傾いた今月19日。革新機構は、買収時にWDの資金拠出を行わず、不足分を革新機構が拠出する日米連合の新提案を東芝に示した。WDの了承を得ないままの提案は、日米連合が逆転するための“背水の陣”だった。
だが、WDは最後の最後まで譲らなかった。関係者はこう打ち明ける。
「了承すれば流れが変わる可能性があった。だが、WDは曖昧な返事しかしなかった」(万福博之)
■東芝半導体、日米韓連合に決定 総額2.4兆円 WDは「遺憾」と声明