
豊田通商などが参画する風力発電から水素を作る実証試験の設備=北海道苫前町【拡大】
--水素事業への取り組みは
「2014年に販売したトヨタ自動車のFCV「ミライ」開発の本格化に伴い、社内の議論も深まり、水素製造から貯蔵、輸送、利用のサプライチェーンの構築の中で何を優先するか模索しました。トヨタからは水素ステーションのインフラ整備の役割が期待され、そこから着手しました。12年に川崎重工業やテクノバなどが立ち上げた水素を活用した低炭素社会を考える「HyGrid(ハイグリッド)研究会」にも参画しました。CO2排出をできるだけゼロに近づける、CO2フリーやエネルギーの地産地消の重要性が活発に議論され、ようやく再生エネ由来の水素事業の実証試験にこぎ着けました。北海道苫前町は森利男町長自身が同町の担当課長として、自治体初の風力発電を稼働させた経緯があり、全国有数の風力発電の旗振り役としても知られており、思惑が一致しました」
◆化石燃料は効果限定的
--なぜ、再生エネ由来の水素をつくるのか
「FCVはガソリン車と違い、走行中にCO2は排出しませんが、化石燃料から水素を取り出したのでは、CO2削減効果は限定的だからです。一方で水素は、再生エネの電力を有効活用する手段としての期待が高まっています。再生エネを拡大するネックになるのが、出力の変動が既存の系統に悪影響を及ぼすことがあげられます。余剰電力を水素に転換し、貯蔵・輸送できれば、水素が課題解決策となる可能性があります」