【eco最前線を聞く】窓用断熱材、高い透明性と軽量化実現 (1/3ページ)

板状に成型加工したティエムファクトリの透明な断熱材「SUFA(スーファ)」=東京都港区
板状に成型加工したティエムファクトリの透明な断熱材「SUFA(スーファ)」=東京都港区【拡大】

 □ティエムファクトリ・山地正洋社長

 京都大学発の素材開発ベンチャー、ティエムファクトリ(東京都江東区)は、透明性が高い窓用断熱材を工業材料化する事業を本格的に始めた。京大との共同研究で、軽量で断熱性が極めて高いエアロゲルという固体を使い、透明化したものを板状にして窓の断熱材として活用する。断熱材の名称は「SUFA(スーファ)」で、透明な窓にサンドイッチのように挟むだけで従来の断熱材をはるかにしのぐ性能が得られるという。

 実用化に向け大手の建材メーカーと共同開発を進めている山地正洋社長に抱負を聞いた。

 ◆住宅北側にも窓設置OK

 --エアロゲルとは

 「直径数十ナノ(1ナノは10億分の1)メートルの穴が無数にあいた多孔質状だ。その体積の90%程度は空気でできている。だから透明で非常に軽い。断熱性能は単板ガラスの4倍にもなる」

 --窓ガラスに使用した場合のメリットは

 「窓材は、1つでも数百キロに達するケースもあるので、施工の際には大人数で運ぶ必要がある。しかし、スーファを使用すれば大幅な軽量化が可能になる。しかも戸建て住宅で採用されると、寒さ対策から窓がなかった北側にも設置でき、もっと採光しやすくなるなど、戸建て住宅の付加価値を高めることになる」

 --開発のきっかけは

 「当社は京都大大学院理学研究科の中西和樹准教授の研究成果をもとに生まれた大学発ベンチャーだ。私が研究員として在籍中に、『これほど素晴らしい素材はない』と思い、事業化に人生を懸けることにした。その後、スーファの発明者である會澤守氏も最高技術責任者(CTO)として迎え入れた。また、特許のライセンス実施権を、京大系TLO(技術移転機関)である関西ティー・エル・オー(京都市下京区)から取得した」