「同質なメンバーで仕事をしているから、目的やテーマが曖昧なままスタートしがち。ブラジルで学んだことは、仕事というのは最初に課題、目的、やり方、すべてをダイバーシティの中で侃々諤々(かんかんがくがく)議論して決めるべきだということ。その過程で非常にユニークないい意見が出るんです。もんでから着手するので、すごい勢いで進む。こちらのほうがずっと効率がいいんじゃないかと。だから日本に帰ったらダイバーシティが生まれるような環境にしようとずっと決めていました」
▼味の素流「働き方改革」の流れ
2008年「味の素グループ WLBビジョン」策定
2012年 職場主体によるWLB向上の取り組み開始
2013年「Work@A~味の素流『働き方改革』~」の立ち上げ
2015年「ダイバーシティ&WLBコンセプト」策定
残業を減らす前に、先んじて「給与アップ」
「働き方改革」はただの時短目的ではない。日本的な「専業主婦がいる男性中心の働き方」では、ダイバーシティが実現しないから、働き方改革が必要になってくるのだ。
同社では、効率化での利益はすべて人材に投資している。残業削減で残業代が減るという不安を払拭(ふっしょく)するために、先行投資として基本給を1万円引き上げた。所定労働時間の短縮で実質的な賃上げもした。軽量のモバイルPCも配り、セキュリティを整備して「どこでもオフィス」(テレワーク)ができるようにした。評価と報酬、そして顧客の巻き込みが働き方改革の本気度の表れなのだが、西井社長は4時半終業も含め、各地に飛んでは顧客に「働き方改革」への協力を求めている。
グローバル人事部マネージャーの菊地さや子さんはその効果が目に見えて表れているという。
「もともと残業が当たり前という風土で、07年度の総実労働時間は2039時間、営業利益は605億円でした。08年度から労使での取り組みを始め、15年度は1947時間で908億円です。16年度からは西井社長が改革を加速し、57時間短縮されて、20年度に1800時間が目標だったのですが、前倒しにして18年度に達成する目標になりました」