中小企業

投資ファンド、事業承継の選択肢に 中小企業の後継者難で利用者が増加 (2/2ページ)

 投資ファンドの支援によって懸案だった新規の海外工場も稼働するなど、経営基盤が強化され収益力も向上。出口戦略として、事業の親和性があり相乗効果が期待できる大手部品メーカーへ売却された。後継社長を中心とする経営は高く評価され、譲渡後も引き続き、経営体制が維持されている。

 「国の機関」に安心感

 中小企業成長支援ファンドは、10年から運用が始まり、17年12月末時点で累計1720億円の投資を実行。うち6割近くが事業承継案件だ。落合徹ファンド事業部審議役は「後継者の確保と育成に期待する利用者が増えている」と話す。

 日本政策投資銀行と日本M&Aセンターの折半出資で設立した「日本投資ファンド」は、経営者の高齢化や後継者難に悩む中小企業の経営権を取得。最高経営責任者(CEO)を送り込んだり、適切な設備投資を行ったりして、企業価値を高める。有力な提携先があれば、事業譲渡につなげる。同センターの能登雄太役員室部長は「提携後にオーナー一族が再出資できるなど、M&Aと比べて柔軟な事業承継を実現することもできる」とファンド活用のメリットを強調する。

 かつての投資ファンドは過激な経営手法から「ハゲタカ」として敬遠されることも多かった。しかし「国の機関である中小機構が出資するファンドが実績を上げていることで安心感が出てきた」(中小機構の落合氏)と企業経営者の間では、意識の変化が広がっている。

 親族承継、経営陣が株主から自社株式を譲り受けたりすることでオーナー経営者として独立するマネジメント・バイアウト(MBO)、M&Aに次ぐ有力な事業承継の選択肢として、投資ファンドの活用が進みそうだ。

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