三井不動産は、ライフサイエンス関連企業の集積や連携を目指す団体、ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)と共同で、医学や生物学といったライフサイエンス系ベンチャーの支援態勢を強化する。具体的には約20の企業・チームが共同で利用できるシェア型研究施設を東京・日本橋のビルに開設。また、ベンチャーの本社などがテナントとして入るオフィスビルを倍増する。
研究施設は、独立系ベンチャーキャピタル(VC)のビヨンド・ネクスト・ベンチャーズ(BNV、東京都中央区)と連携し、2019年2月に開業する。シェア型ウエットラボという研究開発に必要な共同実験機器などをあらかじめ備えたスペースで、こうしたラボが都心部に誕生するのは初めて。三井不動産がBNVに建物を賃貸し、BNVが運営する。
オフィス部などを含めた面積は約450平方メートル。再生医療系ベンチャーなどが中心に利用する見通しで、1カ月の利用料金は20万円前後。利用者は初期投資を抑え、速やかに事業に着手できる点が売り物だ。
三井不動産はBNVが設立したライフサイエンス分野特化型のベンチャーファンドに、LP(有限責任組合員)投資も行った。また、東大が本郷キャンパス(同文京区)に新設したインキュベーション施設の運営を受託。施設の管理や共用実験室の運営など各種業務に携わることで、「東大発ベンチャー、起業家の支援を図っていく」(植田俊・常務執行役員)計画だ。
オフィスビルは「日本橋ライフサイエンスビルシリーズ」として現在は4拠点で展開しているが、18年度中に8拠点まで拡充。シェアオフィスや会議室、ラウンジなどで構成されており、ベンチャーをはじめ大学などライフサイエンス領域の集積を図る。植田氏は「増床ニーズは顕在化しており、需要に応えていく」と強調、将来的には拠点数を、さらに拡大する計画を視野に入れている。
日本橋にはアステラス製薬の本社など大手製薬会社が集積。こうした地の利から、医薬関連の企業や大学、行政などの交流も活発だ。日本橋ライフサイエンスなどには、京大や阪大といった大学から日本製薬工業協会などの医療系団体、ベンチャーなど約80の団体・企業がテナントとして入っている。
今回の取り組みで、日本橋を生命科学産業の一大拠点にする動きが加速することになる。