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日本で根付くか、対戦型ゲームの競技化 北米のDFS市場から考える

 この夏にインドネシアのジャカルタで開催された第18回アジア競技大会(アジア大会)ではエレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)がデモンストレーション競技として開催され、そのうちサッカーゲームである「ウイニングイレブン2018」において日本チームが優勝し金メダルに輝いた。いわゆる「ビデオゲーム」を複数のプレーヤーで対戦して争われるeスポーツは、22年の次回アジア大会では正式競技として取り入れられるという。(GBL研究所理事・宮田正樹)

 スポーツと名付けられてはいるが「eスポーツ」として行われるゲームは、対戦型のゲームであればスポーツに限らず、カードゲーム、戦闘ゲーム、パズルゲームやロールプレイングゲーム(RPG)など、その幅は広い。インターネットの普及とともに拡大してきた「eスポーツ」の市場は世界中で3億8500万人以上の視聴者がいるとされている。

 賞金総額が1億円以上となる大規模な大会もあり、プロのプレーヤーは大会賞金のほか、スポンサーによる援助やキャンペーン出演料などを収入としており、中には、年収が1億円を超えるプレーヤーもいるという。

仮想チームを結成

 eスポーツとは別に、欧米では「ファンタジー・スポーツ」と呼ばれる架空のスポーツチームを作成するシミュレーションゲームも盛んである。サッカーや野球、アメリカンフットボール、バスケットボールなどリアルなリーグスポーツの中から自分で選択した選手からなるチームを結成し、同じようにチームを結成した相手と対戦するのだが、当該リーグスポーツの実際の試合の結果が反映され、勝敗が決まる仕組みになっている。実在する選手を集めてチームを作るので、その選手のシーズン中の実際の成績が連動し、野球なら「ホームランを打ったら1ポイント」「三振を奪ったら1ポイント」といった形で得られるポイントの合計で勝負するのだ。

 ファンタジー・スポーツは無料で提供されるものと、参加料を取って成績優秀者に賞金を還元するものに大別される。従来のファンタジー・スポーツは実際の競技の公式戦に沿って行われ、シーズンを通して戦うタイプが主流であった。数カ月間にもわたるシーズン中、選手の調子や成績を見続け、分析を行い、登録メンバーを入れ替えるには高い知識と情報分析力を要することになる。

 ところが、アメリカにおいてデイリー・ファンタジー・スポーツ(DFS)と呼ばれ、1試合だけを対象に安価な参加料(5~25ドル程度)を支払えば参加でき、簡単に換金できるタイプのものが07年に開発され、14年頃から一気に参加者を拡大していった。ファンタジー・スポーツ事業協会によると16年のファンタジー・スポーツの北米(アメリカ・カナダ)市場は、売り上げ72.2億ドル、競技人口は5930万人に上るという。

賭博疑惑が浮上

 ファンタジー・スポーツの急拡大に寄与したDFSだが、半面、「賭博ではないか?」という法的リスクを持ち込むことにもなった。

 従来のファンタジー・スポーツは勝者に賞金が下されても、情報分析という技量に基づいたゲームということで、賭博には分類されないという解釈が一般的だった。ところが、1試合だけで勝負がつくDFSは本当に「技量に基づく」と言えるのかどうかという点で疑問が呈されたのだ。アメリカでは、1992年に成立した連邦法により、ネバダ州、モンタナ州、デラウェア州、オレゴン州の4州以外では、スポーツ賭博を禁じているため、DFSが賭博として他の全州で禁止される恐れは十分あったのだ。

 しかし、DFS業者にとって幸いなことに、今年5月にアメリカ連邦最高裁判所が、この連邦法は違憲であるとして、「スポーツ賭博の規制は州政府が行うべきである」という判断を下した。したがって、DFSを規制するかどうかの判断は各州に委ねられることになった。日本においてDFS形式のファンタジー・スポーツが認められるかというと、かなりハードルは高そうだ。

【プロフィル】宮田正樹

 みやた・まさき 阪大法卒。1971年伊藤忠商事入社。2000年日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年から現職。二松学舎大学大学院(企業法務)と帝京大学(スポーツ法)で非常勤講師を務めた。

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