代表的な仮想通貨であるビットコイン(BTC)の価格が急落している。昨年12月につけた1BTC=230万円台をピークに下落。今年に入って何度か持ち直す場面もあったが、足元ではピーク時の5分の1以下となる40万円台に落ち込んだ。BTCから派生したビットコインキャッシュ(BCH)が今月16日に分裂したことや規制強化の動きなどが嫌気された。今のところ相場回復の決め手はなく、下落圧力は強まるばかりだ。
今回の下落の発端とされるのが、BCHの分裂だ。BTCの今後の開発の方向性をめぐり開発団体の意見が割れたことが分裂の原因とされている。
通常、仮想通貨の分裂の際には、仮想通貨の取引データの記録作業を行う「採掘者(マイナー)」が、作業の成功報酬である仮想通貨を受ける機会が増えるため、投資家の買いが加速しBTCの相場が過熱する傾向にある。
だが、「分裂後にBTCとBCHのどちらが仮想通貨として存続できるかなど、先行きが見えない状況を投資家が嫌気した」(日本仮想通貨交換業協会)。
さらに、今月に入り米証券取引委員会(SEC)が仮想通貨技術を使った資金調達の取り締まりを強化したことで、摘発される仮想通貨交換業者が増加。こうした米国での規制強化の流れが売りを誘い、BTCにも波及したようだ。
現在のビットコイン価格ではマイニング(採掘)コストの方が大きく割に合わないため、マイナーがBTCを手放そうと売却を急いだことも相場下落に拍車をかけたとみられる。
日本では仮想通貨交換業者のコインチェックやテックビューロから不正流出が相次ぎ、仮想通貨に対する信用が大きく低下。マネーロンダリング(資金洗浄)や金融テロ防止などを目的に仮想通貨に対する規制は各国が強化しており、普及へのハードルはさらに高まる。
分裂を繰り返す通貨の覇権争いに失望する投資家も増えており、仮想通貨の“負の側面”が際立ち始めている。(西村利也)