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挑戦続け、ロードスター30年 「運転の楽しさ」追い求めマツダの象徴に

 マツダのブランドを象徴するオープンタイプの小型スポーツカー「ロードスター」が来年2月、デビュー30周年を迎える。長年にわたりファンの心を揺さぶり続けてきたロードスターにも、電動化やカーシェアリングといった変革の波が押し寄せつつあるが、開発は継続する方針だ。使い勝手を重視した車に押されて存在感が薄くなったスポーツカーの市場で飽くなき挑戦を続ける理由を探った。

 ◆環境変化に負けず

 10月にマツダR&Dセンター横浜(横浜市)で行われた取材会に向かうと、曲線美が光るデザインの4台がたたずんでいた。1989年4月に初代の生産を始め、3度の全面改良を重ねた歴代のロードスターだ。

 2000年には、最も多く生産された「2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネス世界記録に認定。16年には累計生産台数100万台を達成し、今も国内外の根強いファンから支持を集めている。昨年の国内販売実績は前年比14%増の約7000台だった。

 ファンをひきつける魅力が、初代から受け継がれる「人馬一体」だ。騎手が疾走する馬に乗りながら的に向けて矢を射る伝統武芸「流鏑馬」を由来とする製品コンセプトで、騎手と馬の関係のように運転手が意のままに操れる車を追求したという。

 記者は走りを体感しようと初代の助手席に乗車。さらに15年に発売した4代目を運転し、俊敏で軽快な走りを味わった。4代目は排気量1.5リットルのエンジンなど基幹部品を軽くすることで1トンを切る重量を実現。エンジンを車体の前に置き後輪で駆動するロードスターは、前後の重量のバランスを均等にさせており、カーブを走る際に車との一体感を感じることもできた。

 ロードスターは70年に米国で制定された排ガス規制などの影響で一度は消えた小型スポーツカーを復活させる呼び水となったが、ブランドの象徴となるまでの道のりは険しかった。

 趣味性が強いスポーツカーは大量販売が望めず、独自の車台も必要となる。これが開発と製造のコスト増を招くため、存続の議論を呼びやすい。ロードスターも、96年に米フォードの傘下に入ったマツダがバブル崩壊で不振に陥った経営を立て直す過程などで「いかに継続するか」という課題に直面したという。

 マツダで商品本部主査兼チーフデザイナーを務める中山雅氏は、ロードスターが誕生した89年に入社。以来、オーナーでもある中山氏は「車造りで理想を追うことよりも、ビジネスとして上手にやらなければいけないという難しい時期もあった」と振り返る。

 その後、実用性も高めたスポーツ用多目的車(SUV)の台頭や所有にこだわらない消費者の増加など取り巻く環境が変化。中山氏は「この先も難しい場面が出てくると思うが、ファンのために『小さくて軽く、運転し楽しい車』を造り続けたい」と決意を述べた。

 ◆迫る電動化の波

 電動化など次世代技術への対応も迫られている。マツダが10月、二酸化炭素(CO2)排出量削減と走りの進化の両立に向けた技術戦略を発表したからだ。この中で30年の生産車両のうち、5%を電気自動車(EV)、95%を電動化技術を搭載した内燃機関車とする方針を示した。

 初代から一貫して企画や開発に携わってきた商品本部の山口宗則プロジェクトマネージャーは「楽しい走りを表現するためには軽さが必要だが、モーターや電池などを積むと1トンに抑えることが難しくなる」と複雑な胸の内を明かしながらも「電動化はやらなければいけない」と前を向く。

 中山氏も「電動化しても楽しい要素は残したい。そこはエンジニアの力で解決していく」と意気込んだ。

 一方で、人を運転や車の所有から「解放」する取り組みもスポーツカー市場に影を落とす。トヨタ自動車は11月、月額定額制で複数の車種に乗れるサービスを来年始めると発表した。将来は自動運転技術を活用した移動サービスの巨大市場が生まれる可能性も高く、「人に喜びを与える車本来の役割が忘れ去られてしまう」(大手自動車メーカー関係者)といった懸念の声も聞こえてくる。

 ■スポーツカー復権 世界の潮流に

 ただ、スポーツカー再興の火が消えたわけではない。独BMWの日本法人、ビー・エム・ダブリューは11月、後輪駆動の2ドア車「8シリーズ クーペ」の販売を始めた。約20年ぶりに復活した高級車で、同社のペーター・クロンシュナーブル社長は「スポーツカー市場は活況を取り戻しつつある。今後の成長の可能性はある」と述べた。

 独ポルシェも同社初のEV「タイカン」を来年に欧州、2020年には日本に投入する予定。トヨタも02年に生産を中止した「スープラ」の復活を決め、BMWと共同開発し来年前半から世界各国で発売する計画だ。各社からは、スポーツカーをメーカーの存在意義や技術力を伝える広告塔とする意図も読み取れる。

 世界市場でのシェアが2%程度にとどまるマツダは「独自性や強みを持たないと埋没してしまう」(丸本明社長)との危機感から、得意のエンジン技術や独創的なデザインなどを磨いた「新世代商品群」を来年から順次投入しブランド力を強化したい考えだ。その一翼を担うロードスターは、“車との対話”を楽しむ需要を喚起し続ける使命も背負っている。(臼井慎太郎)

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