□J.フロントリテイリング社長・山本良一さん(67)
■「ギンザシックス」は間違いなく成功
--脱百貨店の象徴、複合商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」への評価は
「間違いなく成功だ。銀座という立地の中に世界中のブランドやアート、庭園もある。日本のラグジュアリーモールにするとの狙いだったが、2017年の開業以来固定客が増えている上、海外からの評価も高く業績も予定通りだ。(不動産事業としての)ギンザシックスの成功の要因をきちんと分析し、地域に合う最適解を考えていきたい」
--大丸心斎橋店本館が開業する
「ギンザシックスの成功をそのまま心斎橋に当てはめるのではなく、従来の百貨店ビジネスを踏襲し、心斎橋を支えてくださった顧客に応えていく。一方、4~10階部分はギンザシックスで学んだことを生かす。定期賃貸借契約を結び、テナントがブランドの世界観を十分に出せるような店作りをする。地下も飲食と物販が一緒になったり、今までにないことをやりたい」
--消費動向をどう見る
「昨年は景気の回復感が感じられ、富裕層の消費は好調に推移し訪日外国人観光客(インバウンド)需要の貢献も大きかった。一方、『1人二極化』現象も進み、お昼は牛丼で済ませるなど節約に努めるが、自分に『刺さる』商品は高額でも買っていくメリハリ消費が強まっている。何がピンポイントで求められているかを見極める必要がある」
--インバウンド消費は好調だ
「海外の事例をみると、日本のインバウンド比率は高くなったといっても緒についたばかり。マクロでみると世界の旅行者数は今後も増えると予測され、東京は(彼らが)行きたい都市の上位に入っている。航空機利用で中国などとも数時間で行き来できるようになり、商圏は海外も含めた形で確実に拡大している。インバウンドの固定客化のためどんなサービスを提供するか、どんな品ぞろえが必要かを考えていきたい」
--消費増税を控える
「増税された14年は地方・郊外店の厳しさに拍車がかかった。百貨店でいうボリュームゾーン、つまり中間価格帯にもしわ寄せがきて厳しさが増したのが過去の経験だ。今回も地方・郊外店は心配している。ただ、増税分を活用して幼児教育の無償化が行われる。すると子育て世帯の教育費はどこへ向かうか。貯蓄か、子供の物を買うなどの消費に回るか。消費増税はリスクではあるが、マイナス面だけでなくプラス面にも着目したい。子育て世帯のマインドを動かす刺激的な情報発信ができればいい」
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【プロフィル】山本良一
やまもと・りょういち 明大商卒。1973年大丸入社。J.フロントリテイリング取締役、大丸松坂屋百貨店社長などを経て、2013年4月から現職。神奈川県出身。