【Bizクリニック】医療機器 技術成熟度の違い検証を

Kompath代表取締役CEO高橋遼平氏
Kompath代表取締役CEO高橋遼平氏【拡大】

 □Kompath代表取締役CEO・高橋遼平

 医療機器の開発を企業と大学が共同で進めるうえで、企業が研究開発をしている技術と、大学で研究されている技術の“成熟度”の違いについて理解することが重要になる。対象とする技術の成熟度には両者で隔たりがある。

 まず、米航空宇宙局(NASA)が開発した技術の成熟度指標「テクノロジー・レディネス・レベル・ディフィニションズ」(TRL)を用いて説明したい。ここでは欧州研究・技術協会が提唱する製造工程まで含めたTRLを参照する。

 TRLは研究開発を9段階で示した指標で、数字が大きいほど開発が進んでいる。それぞれの段階は、レベル1「原理的な可能性が示されている」、同2「技術的な概念モデルが示されている」、同3「初歩的な実現性評価を概念と技術に適応した」、同4「統合した試作品を研究室内で検証した」、同5「ユーザー環境で試作品をテストした」、同6「量産に向けた初回生産を実施した」、同7「小規模のパイロット生産を試行した」、同8「製造工程をすべてテスト・検証した」、同9「製品が上市され製造工程が運用可能」となる。

 このうち、大学などの研究機関はレベル1~3の研究に強みをもつ。一方、事業会社はレベル9を目指し、その間に段階的な研究開発と投資を必要とする。とくにレベル3は概念検証、またはプルーフ・オブ・コンセプト(PoC)と呼ばれる重要なプロセスで、会社はその結果によって事業開発を進めるかどうかの投資判断を行う。大学から移管される技術が今、どの成熟度にあるかを見極め、技術成熟度を高めていくための役割分担とスケジュールについて合意する必要がある。

 筆者の経験では、PoCも3つのフェーズに分割して取り組むのがいい。まず「効果および効用の検証」。医療機器でいえば、安全性および有効性を検証するフェーズであり、大学が主として対応するのが望ましい。次に「機能的な実現性の検証」。必要な要素技術を洗い出し、技術の移管を受ける事業会社が自社のリソースに照らし合わせて実現性を検証する。最後に「デザイン的な実現性の検証」。製品化コンセプトが要求する仕様、医療機器でいえば実際に使用する環境などを考慮し、実現性を検証する。このフェーズは産学で取り組むといいだろう。

 技術成熟度の隔たりは、事業化の障壁になることが多い。ある製造業の担当者は、「大学から紹介される技術はユニークだが、製品としてどのように動くのかイメージが難しい」と課題をあげる。模型や“紙芝居”程度のものでよいので、実際に動くモノを作り、認識をすり合わせることから始めてみてはいかがか。PoCを迅速に実施し、理解のギャップを埋めてほしい。

【プロフィル】高橋遼平

 たかはし・りょうへい 京大経卒。東工大環境・社会理工学院修了。工学博士。2012年三菱商事入社。15年10月医療系ITスタートアップのKompathを設立し、共同創業者兼代表取締役CEO。大学付属病院と共同で医用画像処理アプリケーション開発に取り組む。30歳。東京都出身。