高論卓説

既存事業を強化するデジタル変革 現場を巻き込み全社的に戦略構築を (1/2ページ)

 企業トップの年頭あいさつでは「デジタルを活用した企業変革」が数多く取り上げられた。多くの企業がデジタル戦略を専門に扱う組織を立ち上げ、新しい技術の活用方法についての検討を進めてきた。今年はいよいよ成果を出すぞ、という強い意気込みが感じられる。

 昨年までを振り返ると、新しい技術を実際に使って試す実証実験が頻繁に行われるようになった。説明を聞いただけだとピンとこないので、具体的な事業や業務の中に応用して可能性を評価するものだ。技術に対する理解が進む。スタートアップ企業への投資や提携も進んだ。社内のイノベーション活動だけでは不十分だと考える大手企業が外部のノウハウを取り込んで自社への転用を目指す。一方で気になるのは、デジタル活用の取り組みの話と、新規事業立ち上げとがごっちゃになっているように感じられることだ。デジタルというと、ついつい新しいことをやらなければならない強迫観念にとらわれがちだ。

 いくら新しい技術を使っても、ゼロから新しいサービスを生み出すのは簡単ではない。技術は何かを実現するためのツールに過ぎず、根本的には新しいビジネスモデルをつくり上げることが必要になる。たとえ良いモデルを思いついたとしても、既存事業と同等規模のものに仕上げていくのはさらに難しい。

 新しい事業やサービスを狙うのも良いのだが、デジタル技術を応用して既存事業を強化する可能性を徹底して検討すべきだ。今のサービスを強化することが、既存顧客を大切にすることにつながる。

 金融や自動車などの産業では、収益を損なう脅威にさらされている。だが考えてみると、新規参入者は、金融や移動などの顧客が必要としていることに対して、デジタル技術を生かした従来とは違うやり方でサービスを提供しようとしているにすぎない。

 既にサービスを提供しているのであれば、いくらでも顧客から利用方法を確認することができる。顧客が必要としていることの本質は何か。サービス提供者の目線ではなく、利用者の立場で考える。ここでいう顧客とは必ずしも最終消費者とはかぎらない。販売代理店や業務オペレーター、場合によっては危険作業を請け負う従業員などの可能性もある。

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