【Bizクリニック】医療機器の「強い特許」取得ノウハウ

 □Kompath代表取締役CEO・高橋遼平

 医療機器の事業開発において知財戦略は重要だ。そこで「強い特許」を取得するためのノウハウを紹介しよう。

 特許は「特許請求の範囲」と呼ばれる書類に記載される内容において独占権が付与される。どんなに画期的な技術を発明しても「特許請求の範囲」で表現されていなければ、他者に発明の利用を許すことになる。そのため「強い特許」の重要な要素として権利範囲の広さが挙げられる。

 特許の広さがどのようにビジネスに影響するか具体例で確認してみよう。例えば、人工知能(AI)技術によって医用画像から症例を診断するソフトウエアを開発したとする。特許請求の範囲として、(1)医用画像から自動で症例を診断する装置(2)深層学習を用いて、心臓のコンピューター断層撮影(CT)画像から心疾患を自動で診断する装置-という2つの記載を選ぶとすれば、(1)の方が権利範囲は広い。

 権利範囲の広さは、ビジネス上どのような意味をもつのか。一番のメリットは製品仕様の制約が少なくなることだ。(1)の記載で特許が許諾されれば、診療科や、採用するアルゴリズム、対象とする医用画像の種類にとらわれず製品を設計できる。一方、(2)だと深層学習以外のアルゴリズムを用いた装置であれば、独占的な利用ができず、他者のビジネスを許してしまう。磁気共鳴画像(MRI)など他の医用画像には適用されず、心疾患以外を診断する製品は特許で守ることができない。

 また「権利範囲に限らず、侵害検知の容易性についても注意が必要」(太陽国際特許事務所の田中宏明弁理士)だ。特許の権利範囲が広くても、他者の権利侵害を発見できない、または証明が困難な場合、実務上取り扱いの難しい特許といえる。特にソフトウエアに関する特許は、一般に侵害検知が難しくなる傾向にあり、特許請求の範囲における表現方法は工夫が必要だ。

 「強い特許」を端的に表現すれば、実際のビジネス化を想定した使い勝手の良い特許といえる。もちろん、やみくもに抽象的な語句を並べるのが正しいわけではなく、概念検証ができていない発明は特許化されない。また、権利範囲が広い特許であればあるほど、既存特許の権利範囲に含まれる可能性が高まり、特許化が難しくなる。

 研究開発の早期から具体的なビジネスを想定し、どのような権利範囲を確保しにいくのか、知財戦略を策定しながら共同研究を進めていくといい。どのような特許が強く、ビジネス上有用であるかを検討するには、知財に関する知見に限らず、研究開発領域における高い技術力とマーケティングの能力が求められる。

 当社は医用画像処理分野の研究開発に強みを持つので、不明の点があれば相談してほしい。

【プロフィル】高橋遼平

 たかはし・りょうへい 京大経卒。東工大環境・社会理工学院修了。工学博士。2012年三菱商事入社。15年10月医療系ITスタートアップのKompathを設立し、共同創業者兼代表取締役CEO。大学付属病院と共同で医用画像処理アプリケーション開発に取り組む。30歳。東京都出身。