【ブロックチェーン革命の胎動】ブロックチェーンは“人間の仕事”にどんな変化をもたらすのか (2/3ページ)

基調講演した野口悠紀雄氏
基調講演した野口悠紀雄氏【拡大】

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 野口氏は、この変化が「トラストレス(相手に対する信頼の不要な)社会の実現」と評し「これがインターネット上でのビジネスを大きく変えていくことになるだろう」との見方を示した。

 インターネットは、事業拠点や事業規模に関わらず、全世界を相手にしたビジネスを可能にするツールと考えられている。ただし、現在のシステム上では、相手に対する信頼が非常に重要となる。利用者は、ネット通販でもネットバンキングでも、相手がよくわからなければ取り引きはしない。このため、繁盛するのは利用者にとって信頼できるブランドや伝統のあるサービスに偏りがちで、いわば大企業とって有利になっているのが実情だ。

 その点、改ざんなどができないブロックチェーンの場合、取引相手を信用する必要がない。知名度に乏しい中小企業でも、発足間もないスタートアップ企業でも、大企業と対等にビジネスできる環境が出現することになる、というわけだ。

 講演ではこのほか、ブロックチェーンと人工知能(AI)の組み合わせで実現可能となる完全自動会社の登場など、近未来のデジタル社会についても言及した。ブロックチェーンが管理者や経営者の、AIが労働者の仕事を奪うことから、「やがて人間は何をすべきなのか、ということを真剣に考えねばならない時が来る」と指摘。その上で「(デジタル化が進んでも)すべてが代替されるわけではないし、そういう時代に価値を高めるものも出てくる」との展望を語った。

 安心、安全な経済社会に期待 マッカーシー氏

 続いて登壇したハーバード大学ハーバードエクステンションスクール講師のマイケル・マッカーシー氏は、ブロックチェーンの仕組みなどのほかに、ビジネスにブロックチェーン技術を活用することのメリットを紹介した。

 ブロックチェーン技術の公開された台帳や改ざんなどが事実上できない特性に着目。「例えば外国にいる友人に花を贈る場合では、花がどこにあるのか、費用の決済はどうなっているか、といった状況の可視化が実現し、届かない場合の返金なども迅速に対応でき、取り引きはより安全なものになる」と説明した。

 マッカーシー氏はトークンを用いた資金利用のコントロールという用途についても解説した。

 ブロックチェーンによるトークンは用途を限定することなどが可能だ。息子に対して用途を学費に限定したトークンを送るといった場合、息子はそのトークンを使って外国語学校に通うことも書籍を購入することもできるが、自動車を買うことはできない。

 ブロックチェーンによる送金は、国境をまたぐ場合などで大幅な手数料の低減を実現するなどの利点がある。用途のコントロールは、低い手数料とともにメリットの大きな特徴といえるかもしれない。

「安全、安心な経済社会を切り開くと期待できる」