【高論卓説】外国人受け入れ、日本企業の選択 「戦力化は必須」 長期成長の担い手

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 「4月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大は、遅すぎるくらい」。こう話すのは、ビルクリーニングなど総合ビル管理事業を行う新栄不動産ビジネス(東京都新宿区)の新田隆範社長だ。

 出入国管理法改正で、4月から外国人向けの新たな在留資格「特定技能1号・2号」が創設される。単純労働を含めた外国人の就労が認められることになる。介護やビルクリーニング、宿泊、建設、農業など14業種を対象にしている。4月に実施される資格を取得するための特定技能評価試験は、介護、外食、宿泊で、他の11業種も2020年3月まで段階的に行われる。

 新田氏は「オフィスビルの清掃以上に、今はホテルのベッドメーキングをする人手が足りない」と話す。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、都内ではホテルの新築が相次ぐ。訪日外国人旅行者は既に3000万人を突破していて、東京を中心に宿泊施設の需要は大きい。しかし“箱”はできても、ベッドメーキング要員がいないのである。「同業者も手いっぱい。仕方なく、新規の発注はみな断っている」そうだ。

 もっとも、人手不足への対応以上に新田氏は「新しく入る外国人を、できれば戦力にしたい。日本で仕事を覚えてもらい、将来的には海外展開の担い手にもなってほしい」と考えている。このため、「特定技能1号の在留期間が5年間は短すぎる」と話す。

 5年間働いて職場のリーダー格に育った段階で、1号のままでは帰国しなければならない。在留期間の更新に制限のない2号に、試験を受けて転換する道はある。だが、果たしてどうなるのか、詳細が決まらない今は先が読めない。

 同じ悩みは、北関東の中堅自動車部品メーカーも抱く。現在グループ全体で約400人の外国人が工場で働くが、「それでも人手不足は解消されない」と経営者は嘆く。400人の外国人の大半は技能実習生。「せっかく一人前に育っても、5年で帰国させなければならない。そして、新人をゼロから教える。今回の特定技能もこれの繰り返しになるようなら、現場は進化できない」という。単純労働に数えられる工場現場の作業だが、現実には働く人々の工夫や提案に支えられて動いている。

 新田氏は「歴史的にモノづくりが衰退した国に、明日はない。日本はアメリカのようになってはいけない。モノづくりの国として輝き続けるため、外国人の戦力化は必須」と話す。

 日本人として世界最大の半導体製造装置メーカーの米アプライドマテリアルズで上席副社長を務め、その後、韓国サムスン電子でも社外取締役を務めた岩崎哲夫氏は言う。「直進する羊の群れに数頭のヤギを交ぜると、群れは健康になる。砂漠の民であるベドウィン人の知恵だが、異質は大切」と話す。同質は心地良く、キャッチアップには適するが、新しい価値やアイデアは生まれにくい。

 外国人をどう捉えるかにより、企業の10年後は違うものになるだろう。直面する人手不足を解消するための安価な「労働力」か、それとも長期的に会社の成長を担う「人材」なのか。一時的な「共存」か、持続的な「共生」か。

 人口が減り続け、高齢化が進む中、日本企業の選択が迫られている。

【プロフィル】永井隆

 ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は『EVウォーズ』『アサヒビール 30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など多数。