【中小企業へのエール】公共事業と革新 ケインズとシュンペーターの経済理論

 ジョン・メイナード・ケインズとヨーゼフ・A・シュンペーター-。この2人をご存じだろうか。(旭川大学客員教授・増山壽一)

 ともに20世紀を代表する経済学者で、ケインズはイギリス生まれ、シュンペーターはオーストリア出身。2人とも1883年に生まれた。

 ケインズは、20世紀に共産主義が広がっていく中で、危機にひんした資本主義を救った人物であり、現在のマクロ経済の中核的な思想をつくった。

 その思想を一言でいうなら、モノの供給と需要が不安定になって価格が乱高下した際には、政府が予算や金融で、需要を人工的に作り出すことで安定化できるし、安定化させないといけない、という考えだと、筆者は理解している。

 確かに戦前は、米国の大恐慌などの際に、この理論に基づき、政府予算で各地にダムや道路などの公的需要をつくり出して、社会を安定させた。

 不景気なら需要をつくる、公共事業でカンフル剤を打つ、という発想はケインズの思想から生まれた。

 ケインズはこの需要を「有効需要」といっているが、実は、為政者は結果をすぐに求めるために有効でなくても需要をつくりだすことがある。

 年度末に予算を消化するための無駄な公共事業、究極は軍備増強と戦争だ。国民はこの点を注意深く吟味しないといけない。

 一方のシュンペーターは、モノの供給の方に力点を置く。社会が大きな進歩をしていくのは「イノベーション」「変革」の結果と説いた。

 イノベーションを起こすには、企業の不断の努力が必要で具体的には5つの方法になされると言った。

 第1に「新しい商品を作る」、第2に「新しいつくり方を考える」、第3に「新しい売り先を見つける」、第4に「新しい材料を用意する」、最後に「組織を新しくする」。

 今の日本は政府も民間も不景気と不人気を恐れて、需要を人工的に作ることにだけ知恵を絞り、イノベーションを起こして社会の生産性をあげることを忘れているのではないだろうか。

 ケインズとシュンペーターが同じ年に生まれたのは、単なる偶然ではないと思う。

 需要を真に意味のあるものにするには、イノベーションが同時に必要だ。(隔週掲載)

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。56歳。