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三菱電機もAI農業支援に本格参入へ データで最適栽培、年内にも事業化

 三菱電機が人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などを活用した農業支援事業に本格参入する。農業従事者の減少や高齢化を受け、先端技術を使って農家の負担軽減や収入増につなげる。農業にAIなどの先端技術を取り入れる動きは機械メーカーのほか、通信事業者などにも広がっており、開発競争が激化しそうだ。

 三菱電機は、石川県内のイチゴ農家のビニールハウスを使って独自の栽培システムの実証実験を実施している。

 栄養分の分散を防ぐ葉かきと呼ばれる作業は、熟練農家の感覚に頼る部分が多かったが、これをデータ化。それ以外の作業工程などを含め、蓄積した情報やノウハウをAIが学習し、経験に頼らなくても最適な栽培が実現できるようにしている。さらに小規模な水力発電設備を組み合わせて、遠方から温度や湿度などの栽培環境を監視・制御できるIoTシステムも開発しており、担い手不足の解消にもつなげる。同社は、イチゴ以外の果物や野菜などにも応用できるとして、早ければ年内にも事業化に乗り出したい考え。

 こうした先端技術の農業分野への活用は、既にさまざまな取り組みが始まっている。NTTグループは水田の水を遠隔で管理するサービスやイチゴの栽培管理の実証実験を実施。日立製作所はソフトバンクグループ子会社と携帯電話回線を使って、農地の水分量などをスマートフォンで確認できるサービスを始めている。

 また、農業機械分野では自動運転技術が実用化段階に入った。井関農機は昨年12月、有人監視下で無人運転ができるロボットトラクターを開発し、モニター販売を開始。農家の大規模化とともに、従事者減少で熟練運転技術を持つ人材確保が困難になりつつある現状を踏まえた。クボタ、ヤンマーも既に販売しており、農機大手3社の無人ロボットトラクターが出そろった格好だ。

 無人運転は「道路では自動走行させない」「農場には使用者以外は立ち入らない」などと農林水産省が定めており、制約も多い。本格的な導入にはまだ時間がかかる見通しだが、先端技術で大幅に省力化された次世代農業の実現は近づいている。

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