燃費は驚異的で、九州から東京までを無給油で走破してみせたほど優れていたばかりか、動力性能にも不満はなかった。いつの間にかラインナップから姿を消していたものの、メルセデスの先進性と技術力をまざまざと見せつけたモデルとして僕の記憶に深く刻まれている。S400dはあの衝撃と似ているのだ。
しかも、S300hで唯一寂しく感じた直列4気筒の悲哀、つまり振動やサウンドがいまひとつ心地よくなかった部分を、今回の直列6気筒が補っている。上質にさらに磨きをかけたのだ。
走行フィールも同様に味わい深い。電子制御「AIRマチックサスペンション」は、なめし革を敷いた路面を滑っているかのような、しっとりと湿度感をともなった走り方をする。エアサスにありがちな、路面の小さな突起を吸収しきれない悪癖は感じないし、かといってフワフワと車酔いしそうな浮遊感もない。手垢のついた表現なのはお許し願いたいが、まさに路面に吸いついたかのような感覚なのである。
高速道路を往復してみても、かっしりとた堅牢なボディに守られていながら、足回りだけがしなやかに上下動しているかのような印象に終始する。圧倒的にラグジュアリーでありながら、骨格が強固なあたりが、メルセデスSクラスらしい。
いまの僕がメルセデスの中で一台を所有するとしたら、迷わずS400dを指名する。財布さえ許してもらえるのなら、いまからメルセデス販売店に電話したいほどだ。
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【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちらから。
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