昨年新しくオープンした京都市中京区のデザイン拠点「パナソニック デザイン キョウト」の臼井重雄デザインセンター所長は危機感を抱く。ここでのデザインとは、商品戦略やブランディングまでの幅広い領域を意味する。技術の向上で既存の製品に改善を重ねるというこれまでの開発方法でなく、技術にこだわらず、新たな価値を提供する家電やサービスを、デザイナーの視点から発案して商品化するのが目標だ。
京都を選んだのは世界的なブランド力を持ち、多くの伝統工芸が存在する利点を生かすことを狙ったからだ。
急成長した中韓勢
臼井氏は2007年から約10年中国に赴任しデザインに携わってきた。しかし、この間、パナソニックをはじめとする日本メーカーは薄型テレビ競争で価格競争力のある中韓勢に敗れ、相次ぎ巨額赤字を計上。同じ大阪府内に本社があるシャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。
臼井氏の目には、中国ではめまぐるしい勢いで技術が向上し、新製品もヒットする一方で、パナソニックは旧態依然としているように映った。