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「白タク営業」規制再緩和へ 政府、運行管理をタクシー業者委託

 政府が一般人でも自家用車でタクシーのような有償運送業務ができる制度の拡大に乗り出した。一般人によるタクシー業務は「白タク」として原則禁止だが、ドライバー不足が深刻な過疎地などでは例外を認める制度がある。政府はこの制度をさらに緩和し、利便性を高める方針だ。しかし、タクシー業界は米国で普及が進むウーバー・テクノロジーズなどによるライドシェア(相乗り)の解禁につながる動きだと反発。国土交通省はライドシェアとは異なる制度だと説明しているが、同業界は懸念を強めている。

 「自家用車を用いた有償での旅客運送は、現在の制度を利用しやすくするための見直しが必要だ」

 7日の未来投資会議で安倍晋三首相は国交省に具体的な対応を指示した。

 自家用車を使ったタクシー業務は公共交通機関のない過疎地などで、「自家用有償旅客運送制度」として例外的に認められている。背景にあるのはタクシー運転手が年々減少している実態だ。2016年度の運転手の数は約29万人で、ピーク時(05年度)の4分の3程度にまで落ち込んだ。

 しかし、同制度は市町村やNPO法人といった運行主体が制度利用の登録をして、配車などの運行管理責任者を選任する必要もあるなど制限が多く、導入は進んでいない。このため未来投資会議は運行管理をタクシー事業者に委託するなどの連携を認めるなどして普及を進める。一方、地域限定などの現行制度の枠組みは維持する見通しだ。

 ただしタクシー業界は政府への反発を強めている。同制度は運転手に「1種免許の効力が過去2年以内において停止されていない」などの条件を定めているが、タクシー業務などに必要な2種免許は不要。このため、政府の動きは一般人のタクシー業務解禁につながるようにみえるからだ。

 ウーバーが米国で先鞭(せんべん)をつけたライドシェアもドライバーは一般人。ドライバー登録者が増えることで利便性も高まり、サービスの定着が進むが、タクシー業界との軋轢(あつれき)も生んでいる。全国自動車交通労働組合連合会の松永次央書記長は「海外でライドシェアが人気なのは、タクシードライバーが怖いから。日本のタクシーは安心だ」とし、日本ではライドシェア拡大の必要性は薄いとの立場だ。

 国交省幹部は「首相はライドシェア拡大とは一言も言っていない」とタクシー業界の反応に困惑気味だ。しかし、同連合会は東京都内でライドシェア解禁反対を訴えるデモを開くなど警戒を解いていない。(大坪玲央)

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