量販店「1円」スマホ急増 セット販売禁止で過剰割引

「iPhone(アイフォーン)XR」を実質1円としたヨドバシカメラ店舗内の表示=1日、東京都千代田区
「iPhone(アイフォーン)XR」を実質1円としたヨドバシカメラ店舗内の表示=1日、東京都千代田区【拡大】

 スマートフォン端末を「1円」などとした大幅な割引が家電量販店で急増している。回線契約とセットにした端末値引きが禁止される方向で、価格が高止まりして売れ行きが鈍る恐れを見越した駆け込みとみられる。ただ過剰な割引を抑制する国の思惑と逆行する形となり、反動による市場の冷え込みも懸念される。

 量販店は携帯電話会社の割引プランに加え、独自の値引きを上乗せして端末を販売している。ヨドバシカメラやビックカメラなど東京都内の複数店舗で今月、米アップルの定価8万4800円(税別)の「iPhone(アイフォーン)XR(テンアール)」が実質1円で売られていた。

 他社からの乗り換えなどいくつかの条件を満たす必要があるが、量販店ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの各売り場で多くの機種が割引されている。

 背景には携帯料金引き下げへの動きがある。政府は今月に入り、電気通信事業法の改正案を国会に提出した。端末割引の費用を月々の通信料で回収する料金プランを禁じる内容で、年内にも施行される見通しだ。

 通信料が下がる半面、端末の値引きがしにくくなるため、量販店は早めに在庫を減らしておきたい考えのようだ。専門家は「施行が近づくにつれ割引競争は過熱する」と予想している。

 法改正では販売代理店の届け出制も導入され、不適切な値引きは行政処分の対象になる。一方、携帯各社はセット販売とは違う手法で「一定の端末値引きは続ける」(ドコモの吉沢和弘社長)としており、端末の価格動向は見通しにくい状況だ。