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佐々木酒造店 震災から8年、酒蔵復活で地域貢献 (1/2ページ)

 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区。700人以上が津波にのまれるなどし、犠牲になった。その地で1871(明治4)年の創業以来、港町の閖上で地酒を醸し続けてきた佐々木酒造店。震災で酒蔵が流失したが、再建に向けて立ち上がり、同市内の仮設蔵で、その製法を進化させながら酒造りを絶やさなかった。震災から8年。今年8月、閖上に新しい蔵、店舗の再建を控える同社の佐々木洋専務(42)は酒蔵の復活で閖上のさらなる復興に寄与したいと意気込んでいる。

仮設蔵から入賞

 「日本の醸造史上、類を見ない環境」。佐々木専務は仮設蔵で語る。温度、湿度などの徹底的な管理が必要な酒造りにとって、空き倉庫に改築を加えた仮設蔵は、良い環境とは言えない。製造量も限られる。それでも震災後すぐに酒造りを再開、2014年、17年は、酒造技術を測る物差しとして「全国新酒鑑評会」に酒を出品し入賞を果たすまでになった。14年の「純米大吟醸 浪庵(ろあん)」と17年の「浪の音 純米酒 閖(ゆり)」。どちらも震災後、従来の製法に手を加え、仮設蔵で生まれた酒だ。宮城県産業技術総合センターの有識者に技術指導も仰いだ。

 「タンクが小さくなるなど、さまざまな環境が仮設蔵に来て変わった。麹の作り方や発酵の管理を見直して臨んだ」と佐々木専務は振り返る。

 「ここでできる最善、最良を求めて」。この合言葉で酒造りを震災前までの純米酒から特別純米酒、純米大吟醸にシフトさせた。「前より格段においしくなった。キレ、香り、飲み口が違う」。地域の人々はこんな声を寄せる。仮設蔵だからこそ研究、改良を施した産物だと佐々木専務は語る。「このような環境ではお酒が造れないと言われていた中、おいしくなったと思われてうれしかった」と話す。

 震災復興酒と銘打ち、これまで佐々木酒造店の代表的な酒として人々に届けてきた「宝船 浪の音 閖」。閖上の復興途上の姿と重ねた一品だ。商店や遊興施設も完成し始めている閖上の姿、加えてその地に新しい酒蔵を構える佐々木酒造店の姿に重ね、宮城県産のブランド米トヨニシキを使った「純米吟醸 玲瓏(れいろう)」を打ち出している。玲瓏は「物と物が触れ合ったときに出る美しい音色」の意。閖上復興を応援してくれた全国の人々との縁、そして和食、洋食どちらとも合う酒ということを表現したと佐々木専務は語る。「お酒が苦手な人でも飲んでみてほしい。たくさんの人に届けたい」と話した。

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