ブラックホール撮影、初の成功 国立天文台など国際チーム

 宇宙で最も重く、謎に包まれた天体であるブラックホールの撮影に世界で初めて成功したと国立天文台などの国際チームが10日、発表した。強い重力で光さえのみ込んでしまうため撮影は困難とされてきたが、高精度の電波望遠鏡を使って「黒い穴」のように見える姿を捉えた。ブラックホールの存在を証明する画期的な成果で、天文学の大きな前進となる。

 ブラックホールは非常に強い重力によって周囲の物質を引き寄せ、のみ込んでしまう性質がある。光も引き込まれ、外に出てこないため真っ暗で、撮影できなかった。成功はノーベル賞級の成果だ。

 国際チームが撮影したのは、5500万光年離れたおとめ座のM87銀河の中心にある巨大ブラックホール。太陽の数十億倍の質量を持つ。

 周囲にあるガスは、ブラックホールに引き込まれるときに明るく輝く。これを撮影することで、ブラックホールの存在を円形の影として浮かび上がらせることに成功した。

 ブラックホールの周囲では、強い重力によって空間がゆがんでいる。この影響で周囲のガスから出た光が曲げられ、輪のように見える様子も捉えた。

 国立天文台などが建設した南米チリのアルマ望遠鏡や米欧、南極など計6カ所にある電波望遠鏡が連携し、地球サイズの巨大な望遠鏡に匹敵する高解像度の観測体制を構築。2017年4月の観測データを組み合わせて画像化した。

 宇宙にブラックホールが存在することは周囲の天体の動きから間接的に分かっていたが、直接捉えたことで「究極的な証明」(チーム)となった。穴の形を理論上の予測と比較することでブラックホールの性質解明や、重力が強い空間で既存の物理法則が成立するかを検証するのに役立つ。