一方、時期を同じくして話題になった企業がある。まさにCSR(企業の社会的責任)を果たしたといえる内容であった。ユニクロを展開するファーストリテイリング、YKK、繊維メーカーのクラボウ、ブラザー販売、大阪モード学園である。
雑貨を作るため、裾丈を切る際に出る端切れをファーストリテイリングが無償で提供。デザインは大阪モード学園の学生に協力を依頼。障害者が手作りした商品を取り扱うセレクトショップからの申し出を快諾した。
セレクトショップの代表は、大阪は商売の町なのに、障害者の工賃が低いままであることを懸念していた。2017年度、厚生労働省の工賃実績によると、就労継続支援B型の全国平均工賃は1万5603円。大阪府は1万1575円で全国最低クラスということである。
関係者の思いが企業を巻き込んでプロジェクトになっていったのだと想像されるが、本来、企業の社会的責任とはこういうことではないだろうか。こちらの話題にはストーリーがある。そして、関係者全員がみな誰かの役に立てるという喜びがある。そしてこれを伝えたいという共感がさらなる話題をまき起こす。
広報活動をする際には、誰のお役に立てているのか、どんな社会を目指して活動しているのかという視点が欠けると企業価値を下げるだけである。地域社会への貢献、環境問題への配慮、さまざまな社会問題に立ち向かう企業や個人が応援され、注目される世の中であってほしいと願う。
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【プロフィル】芝蘭友
しらんゆう ストーリー戦略コンサルタント。グロービス経営大学院修士課程修了。経営学修士(MBA)。うぃずあっぷを2008年に設立し代表取締役に就任。大阪府出身。著書に『死ぬまでに一度は読みたいビジネス名著280の言葉』(かんき出版)がある。