メーカー

バニラ栽培で障害者雇用拡大 沖縄県北中城村「ソルファコミュニティ」

 世界的に価格が高騰しているバニラを栽培加工し、障害者らの雇用拡大や貧困解消につなげる計画が沖縄県北中城村で始まった。とろける香りで地域を豊かに-。洋菓子に欠かせない素材の安定供給へ、パティシエたちも熱い視線を送る。

 「さあ、最初の1本を植えてみよう」。今月7日、強い日差しが降り注ぐ農園で小さな苗が植え付けられた。

 栽培を担うのは、肥料も農薬も使わない自然栽培でバナナなどを作ってきた地元の合同会社「ソルファコミュニティ」。メンバーの多くに精神や身体の障害がある。チェーンソーで木を伐採していた川畑厚さん(54)は知的障害があり文字を覚えるのは苦手。「でも、動くのは好きで楽しいよ」と汗を拭う。

 人の手が30年以上入らず、農園といってもまだジャングルのようだ。村では高齢化で多くの農地が耕作放棄地になっている。うち年内に1万5000平方メートルを徐々に開墾し、1500本を植栽。2~3年後の収穫を目指す。

 代表の玉城卓さん(35)は「障害者に限らず、所得の低い人に仕事をつくり、沖縄の貧困解消にもつなげたい」と意気込む。新垣邦男村長(63)は「失敗したっていい。若者たちの挑戦を応援したい」とエールを送る。

 なぜ、バニラに狙いを定めたのか。企画したNPO法人「ディーセントワーク・ラボ」(東京)の中尾文香代表理事(36)は、バニラ果実「バニラビーンズ」の価格高騰を理由に挙げる。マダガスカル産が世界シェアの8割を占めるが、近年は自然災害による不作に投機的な売買が重なった。

 財務省貿易統計によると、輸入価格は過去5年で10倍以上に急騰し、2018年は1キロ当たり約6万円。輸入量は、ほぼ半減した。中尾さんは「手軽に楽しめなくなり、アイスクリームやプリンから黒の粒々が消えた」と顔をしかめる。

 洋菓子業界には深刻な事態で、バウムクーヘンで知られる「クラブハリエ」(滋賀県近江八幡市)は今回の計画へ資金などを提供。有名パティシエの山本隆夫社長(46)は「バニラを使うことを諦めざるを得ない危機的な状況。香りの良いバニラを一緒に作りたい」と期待を寄せる。

 鍵となるのは、収穫後に3カ月かけて繰り返す発酵や乾燥工程だ。国内でもバニラ栽培の先例はあるものの、豊かな風味を生み出す加工技術が乏しい。パティシエの間で国産品は「洋酒のようなマダガスカル産に比べ、香りが10分の1以下」とも評される。

 バニラ原産地のメキシコに乗り込み、農家に「弟子入り」もした玉城さん。日焼けした顔をほころばせ前を向く。「研究と実践が同時進行。未知数だからこそ面白い」

【用語解説】バニラビーンズ

 ラン科植物バニラの果実。細長いさやを収穫後、発酵と乾燥を繰り返すと黒く熟成する。生産に手間がかかり高価なため「緑のゴールド」とも呼ばれる。国内では気候が適した沖縄県のほか福岡、宮崎両県などで栽培。「白い恋人」で知られる石屋製菓(札幌市)も試験栽培している。価格が高騰し、ハーゲンダッツジャパン(東京)が6月出荷分からアイスクリームを値上げしたなど影響が出ている。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus