鉄道各社が相次ぎ、ベンチャー企業や新興企業の支援に乗り出している。京浜急行電鉄は11日、東京・品川駅近くに、複数のベンチャー企業やそれを支援する企業などが交流するオープンイノベーション施設を開業した。東京メトロは、貸しスペースのプラットホーム運営ベンチャーに出資し共同事業を始めている。ベンチャーとの連携で新規事業を立ち上げると同時に、成長後のベンチャーの拠点を沿線に呼び込む狙いがある。
京急の新施設「アンドオン品川」は、ITを活用した次世代交通サービス「MaaS(マース)」に関連した新規事業の創出につなげていく。6~7社のベンチャー企業が常駐するほか、新事業立ち上げに取り組む個人の参加を想定。京急では複数の企業、個人の交流促進で次々にビジネスを創出させたいとしている。
また、阪急電鉄とJR西日本イノベーションズは、英ベンチャー支援大手のレインメイキングと組んで新興企業を支援するプログラムを始める。世界の有望なスタートアップ企業を選抜し、大阪など日本市場での成長を後押しする。
各社の取り組みの背景には、少子高齢化とデジタル化進展による鉄道利用減少に対する危機感がある。主力の鉄道事業の減速懸念に対し、非鉄道の新規事業を育成する必要に迫られているからだ。だが、鉄道関連以外の新規事業を創出・育成するにはノウハウに乏しく、独力ではハードルが高い。このため、ベンチャーなど他社との協業を新規事業の実現に結びつけたい考えで、多くの用地など保有資産を生かした農業や貸しスペースなどの事業が想定されている。
一方、ベンチャー支援には将来の沿線のオフィス需要拡大への期待もある。支援施設などで起業したベンチャーは、その周辺でオフィスを開設することが多い。初期段階のベンチャーとの関係を強化することで、成長が見込まれる企業の集積につなげる狙いだ。
鉄道各社は歴史的にも沿線に百貨店や商業施設を開設・誘致し、利用者の拡大を図ってきた。ベンチャー企業の集積も同様の沿線の魅力向上に向けた戦略で、各社とも積極的に注力していく方向だ。(平尾孝)