スニーカースタイルのキャビンクルーが理念を体現
そのコンセプトが一番象徴的に表れているのは、なんと言ってもキャビンアテンダントの足元です。そう、公式スニーカーなのです。デザイナーの堀内太郎氏が手掛けた業務内容や気温で数十種類の着回しが可能なユニフォームと合わせて採用されています。
考えてみると、飛行機内のサービスというのは本当に重労働の極みです。常に振動や傾斜がある中で重いサービスワゴンやトレーを持ち働き詰め。しかも緊急時には保安要員としての役割も担います。動きやすく疲れないスニーカーは考えてみればベストチョイスなのです。
世間では仕事でパンプスを着用することを義務付けられることに対する異議をとなえる#KuToo運動なども起こっており、さらに言えば、クールビズもかなりビジネス界へ定着するなど、合理的で働きやすい仕事着に対する理解や許容度は高まっているように感じます。もっと言えば、積極的にそのようなムーブメントを支持したいという意向の人も少なからずいるかもしれません。
まさに、JAL資本ながら、もしくはJAL資本だからこそ、レガシーキャリアの戦略の真逆を行く、カジュアル、シンプル、リーズナブルさを究める路線。競合のLCCを見ても派手な暖色系や蛍光色で、旅の楽しさや刺激を訴求するエアラインが多いわけですからとにかく差別化は十分です。
合理性の価値を理解する顧客とのエンゲージメントが生命線
これからどんな時代になっても、飛行機旅行に、贅や最高のホスピタリティー、フォーマルさを求めるニーズはなくならないでしょう。ビジネスジェットを私有するまでには至らないけれど、それに次ぐサービスを求めるファーストクラスやビジネスクラスの顧客。そんなお得意様がレガシーキャリアを支えることには間違いがありません。
一方で、旅慣れていて過剰に干渉されるより、飛行機の時間は快適ながらもシンプルで十分という価値観、もっと言えば、サービスする側にも過度な負荷がかからないことを望む人も今や多いように思います。そんな、多様化した意識にジャストフィットのサービスの選択肢が提供されることは我々にとってもありがたいことに違いありません。
とかく合理性や先進性は冷たく感じられやすい部分もあります。いかにZIPAIRが提供する価値を共感や応援したいというところまで高められるか。いかに顧客とのエンゲージメント(ブランドとの深い絆)を結べるかが命運を決するように思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら