高論卓説

SNSと「表現の不自由展」 ネット世論のパワー、扱いに見識を (2/2ページ)

 戦後、マスメディアが第4の権力になるにしたがって、表現の自由は表現する側の権利だけでなく、表現を受け取る側の知る権利として再構成されてきた。情報を提供する力が寡占状態になれば、情報提供者は提供する情報の選択によって容易に世論形成を誘導できるからである。

 今回の事件は、第5の権力に成長したSNS(会員制交流サイト)が表現の自由に与える影響の大きさについても考えさせるものになった。愛知県には、13日までに約5500件の抗議の電話やファクス、メールが届き、そのうち脅迫メールが770通あったという。多くの人がSNS上で、河村市長に賛同し、公共団体はこのような企画展の開催を認めるべきではないと述べている。

 もともと、名誉毀損(きそん)やわいせつな表現のように公共の福祉に反する表現は禁止されている。反対にそのように禁止される範疇(はんちゅう)でない表現の自由は保障されなければならない。

 憲法は、基本的に国家権力と個人との関係のルールである。しかし、ネット世論が特定の表現を封殺できるようになると、結果として言論の自由市場は成立しなくなる。マジョリティー(大多数)の好ましいと感じる表現だけで構成される社会は実質的な自由のない社会であり、イノベーションも起こらない。ネットの力によって復権した個人は、獲得したパワーに見合う見識を持つ必要がある。

【プロフィル】古田利雄

 ふるた・としお 弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士。1991年弁護士登録。ベンチャー起業支援をテーマに活動を続けている。東証1部のトランザクションなど上場企業の社外役員も兼務。東京都出身。

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