イケメンボイスは「たのきんのヨッちゃん」
デザイン性にこだわった自動車で人気のあるマツダのCMの最新作が、「おしゃれ」「品性がある」などと評判だ。人物は全く登場しておらず、車を引き立たせる背景や陰影、落ち着いた声色のナレーション、というシンプルで深みのあるつくり。マツダのブランドメッセージを伝える“イケメンボイス”の主は、6年間も同じ人物が務めている。1980年代に一世を風靡(ふうび)したアイドルグループ「たのきんトリオ」で、「ヨッちゃん」の愛称で親しまれたギタリストの野村義男さんだ。
「マツダという名のクルマたちが、走り出す」
7月から始まったCM「MAZDAという名のクルマたちが走り出す」篇は、野村さんの心地よく耳になじむ声で始まる。
画面には、夜明けを思わせる薄明かりの道路をゆっくりと走る「ソウルレッド」色の車両。マツダ自慢のデザイン哲学「魂動(こどう)」に基づいた車体造形による曲線と光の陰影が薄明かりのなかに浮かび上がり、躍動感を伝えている。
画面は切り替わり、赤い車体に銀色の車名エンブレムが次々と映し出されていく。
「MAZDA2」「MAZDA6」「MAZDA3」-。それぞれ「デミオ」「アテンザ」「アクセラ」といえば分かりやすいが、マツダはこの春以降、新モデルの車名を会社名と数字、アルファベットの組み合わせに変更した(ロードスターを除く)。
その意図を、野村さんの品のあるナレーションが次のように語る。
「そのすべてに、私たちの信念は息づいている。毎日は、もっと光り輝く、美しいものになる」
「2」は朝霧にけむる湖畔で、「6」は高級ホテルのような建物の夜の玄関で、「3」は薄明かりの橋の上で。どの場面でも繊細な陰影のなかで、車が存在感を放つ。「美しく走る」。新たな企業キャッチコピーが、野村さんの声と文字で示され、CMは締めくくられる。
マツダのメッセージ性の強いCMは、以前から「デザイン本部」が監修している。「一目見ただけでマツダ車と分かる」ようなカーデザインを作り出す部門だが、業務は車の造形や内外装という範疇(はんちゅう)にとどまらない。
マツダは、「デザインはブランド価値そのもの」(前田育男常務執行役員)と考えている。企業名を据えた車名の統一も、「引き算の美学」「余白の豊潤」といった言葉で表現されるブランドデザインの一つの具現化といえるだろう。
そうした価値観を広く伝えるCMでの「声」の役割について、広報担当者は「ナレーターも企業人格を表すものだと考えている」と説明する。意志と落ち着きを兼ね備えた声が「マツダの目指す方向に合致」しているとして、2013年から野村さんを登用している。
https://www.youtube.com/watch?v=u0YCYeI__m8