過剰債務の企業が、再生のために金融機関から債務免除を受けるのは容易ではない。モラルハザードの懸念や、債務を返済し続けている他の融資先企業との公平性の問題があるからだ。金融機関から同意を得るためには、最低でも経営責任の明確化、清算価値保障原則(破産するよりも弁済額が大きいこと)、徹底した情報開示が不可欠となる。債務者企業が粉飾に手を染めていれば、その実情や原因を究明しなければならない。(堂野法律事務所所長弁護士・堂野達之)
経営責任の明確化は多くの場合、経営者の退任を求められる。逆に言えば、事業再生により事業承継が促されるという側面がある。また、事業承継を機に事業再生(債務免除)に踏み出すという考え方もある。会社の経営が経営者個人の手腕や人脈に依存している場合は、経営者の続投や、一旦退任しても新会社で顧問として雇用されることがあり得る。経営者の私財の提供も求められるが、「経営者保証に関するガイドライン」により資産を残す道もある。
自力再建で、一部の債務を長期で分割返済するパターンでは、事業計画の合理性や実現性、計画の透明性(中立公正な第三者機関による検証を経ること)、リストラなどの抜本的な自助努力が求められる。事業計画は、損益を堅めに予測するとともに、窮境原因を明確にし、これを除去するための具体的な策を示す必要がある。
スポンサーの支援で設立した新会社に事業譲渡し、譲渡対価で一部の債務を一括返済するパターンでは、譲渡対価の適正、スポンサー選定手続きの透明性(入札まで必須というわけではないが、他の候補者も探したり検討したりしたか)や、これらを中立公正な第三者機関により検証することが求められる。
金融機関から債務免除を受けるためのハードルは高いが、一定の利益を安定して出せる事業であれば、雇用の維持や地域経済の活性化の観点から、金融機関としても真摯(しんし)に検討せざるを得ない。金融機関ときちんと協議をして、低姿勢で丁寧に理解を得ていかなければならない。
債務免除に関して金融機関と折衝することは、経営者は慣れないし緊張を強いられるので、再生に通じた弁護士を代理人として立てることが欠かせない。
再生のための債務免除は、前向きではあるものの債権者・債務者双方に痛みを伴うため、経営者には事業を続けていく信念と、利害関係者に虚心坦懐(たんかい)に向き合う姿勢、臨機応変に対応する柔軟性が求められる。
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【プロフィル】堂野達之
どうの・たつゆき 東大法卒。2000年4月弁護士登録(東京弁護士会所属)。17年1月から現職。企業経営の総合支援を柱に据え、企業の誕生・成長・発展・再生・承継・終焉・第二創業のライフサイクルに密に関わり、特に事業再生と事業承継の案件に数多く取り組む。著書は「特定調停手続の新運用の実務」(共著)など。47歳。神奈川県出身。