中小企業へのエール

世界のITビジネス 金融と融合、途上国のスマホ決済急発展

 世界には銀行口座を持てない成人が約17億人超いるといわれている。世界人口が約80億人。そのうち成人が約60億人として、3人に1人は銀行口座を持てずに生活していることになる。果たして、銀行を利用し口座を持つ利点は何だろうか。(旭川大学客員教授・増山壽一)

 安全に入出金を管理、運用し、企業・個人間での送金を国内外にでき、時には融資も受けられる。だがこんなメリットを享受できない人が、世界に3人に1人いるというのが現実だ。

 その理由は、まず銀行システム自体が、高価で維持コストがかかり、途上国では発展させていくのが難しい。また、途上国の貧しく、人口も希薄な地域にまでネットワークを広げても、取り扱う額が少額であることから、銀行がビジネスとして成立しない。結果、先進国と途上国で富の格差拡大が進展する。これが今までのイメージだった。しかし近年、ITによって途上国が先進国を逆転できるような状況となった。

 先月カンボジアに出張で行った際、現地の銀行に立ち寄ったときのこと。カンボジアは、ポル・ポト政権による大虐殺で人口の3分の1が犠牲となった国だ。現在の人口構成における若者比率は50%を超え、ベトナムとタイの中間地という利を生かし、急激な経済成長を遂げている。銀行では、口座開設を待つ人々が長蛇の列をなしているかと思っていたが閑散としている。

 現地の人に尋ねると、この国はドル本位制でしかもドル資金を自由に出せる数少ない国。しかも5年定期の金利が最大6%以上の条件もあり、国内外から口座開設の要望が殺到している。窓口が閑散としているのは、口座開設には基本的にスマートフォンで手続きを行い、開設後は海外送金なども含めて全てのサービスが完結するのだ。

 現在、日本で「フィンテック」という言葉がもてはやされているが、遅れていると思われていた途上国の金融システムが、いつの間にか先進国の日本を追い越している。

 大渋滞の市内で便利なトゥクトゥク(客車付き三輪バイク)だが、今まで一度も乗ったことはなかった。しかし、このタクシーがスマホを使い米ウーバー・テクノロジーズのように配車し、希望の行き先までの最短ルートを検索し決済までできる。ぼったくりの被害もなく安心して利用できるようになっているのだ。

 口座を持てない人々がスマホを持つことで自由にビジネスができるそんな時代が来ている。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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