その後、地元の永平寺町は、廃線跡を遊歩道として整備。そして28年から、県とともに国の地方創生拠点整備交付金を活用し、道の拡幅など自動運転の実験場として活用できる環境を整えた。同町によると、沿道の人口は27年で2828人と、5年前から200人近く減り、過疎化が進んでいる。そこで「自動運転技術で、どんな交通サービスが可能なのか実現性も含め検証」(町の担当者)するため実験場化に踏み切った。
「枯れた技術」が花
その後、産総研が29年3月、自動運転の「実証評価地域」の一つに選定。産総研の実験では、「電磁誘導式」という技術が使われている。路面に磁力を放つ電線を設け、カートが感知し、それに沿って走行する方式。永平寺参ろーどには電線が埋め込まれている。
センサーやカメラで障害物などを認知したり、衛星利用測位システム(GPS)で位置情報を確認したりして走る最先端技術ではなく、「枯れた技術」とも呼ばれるものだ。
この技術は、実験にカートを提供するヤマハ発動機が平成8年から商品化し、ゴルフ場のカート専用道などで導入されてきた。
「枯れた」というと、マイナスイメージを抱きがちだが、年月を経て検証が十分に行われ安全性が確立されている、という側面がある。産総研の担当者は「電磁誘導式ならば沿道の木々が茂ったり、多少の雪が積もったりしても走行に支障なく、事業性が高く最適と判断した」と打ち明ける。
来年5月までに施行される改正道路交通法では、一定条件下でドライバーに代わりシステムが運転するレベル3(条件付き自動運転)の走行が可能になり、法的な環境整備も進む。新たな未来を開く技術が、名刹(めいさつ)に続く道から発信されそうだ。