サウジアラビアの石油施設が14日、無人機によって攻撃され、同国の石油生産が半減する事態となり、一時原油価格が急上昇した問題。その後、サウジ側が、今月中にも供給を攻撃以前の水準に戻すと表明したことで、原油価格が下落に転じるなど、落ち着きをみせ始めている。
しかし、国内のエネルギー業界のトップからは、中東情勢がこれまでとは異なった段階に入り、緊張が高まっているのではないかと、警戒感を強めている。
石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)は19日の定例会見で、サウジ石油相が9月中に産油能力を回復させると明言したことに加え、サウジでの原油タンカーへの船積みは正常化していることを強調。今回の攻撃においても、「供給不安は解消している」と説明した。サウジの減産分は、世界の石油供給量の5~6%を占めるとされるなど影響も大きいだけに、生産回復をエネルギー業界は歓迎した。
しかし、月岡氏は、直接的な石油施設への攻撃だったことに対し、「同様の攻撃が他の中東産油国で起こらないとはかぎらない」と語り、中東での混乱が大きくなる可能性についても言及した。
この直接的な施設への攻撃については、電気事業連合会の岩根茂樹会長(関西電力社長)も「無人機の攻撃によって、世界の石油供給の6%が停止した事実は衝撃的」と、驚きを隠さない。
日本ガス協会の広瀬道明会長(東京ガス会長)は「これまでの中東のリスクとしてはホルムズ海峡封鎖で、輸入が停止することを主に想定してきた」と、24日の会見で語った。石油施設への直接攻撃について、「中東のリスクが今までとは違う新たな局面に入った」と、情勢を分析した。
エネルギー業界では、安倍晋三首相が米国とイランを仲介することで、中東情勢の緊張緩和を期待する。今回の安倍首相の訪米では、イランのロウハニ大統領、トランプ米大統領と相次いで会談し、両国双方に自制を求めるとされる。広瀬氏は「中東の緊張緩和に日本がリーダーシップがとれるよう、安倍首相の手腕に期待する」と語った。(平尾孝)
◇
■石油施設攻撃に対するエネルギー業界のコメント
◆石油連盟・月岡隆会長
サウジ以外の中東産油国で攻撃が起こらないとは限らず、原油市況は一段と不透明となった
◆電気事業連合会・岩根茂樹会長
ドローンの攻撃で世界の原油生産の6%が停止した事実は衝撃的だ。今後の情勢注視が必要
◆日本ガス協会・広瀬道明会長
中東のリスクが今までとは違う新たな局面に入った。LNG価格が時間差で上昇する懸念もある