日韓の経済界が関係改善を模索する一方、日本の経済界は韓国における日本製品の不買運動に代表される反日運動に警戒感を強めている。韓国での不買運動は過去にも起きたが、運動の拡大の様相がこれまでとは異なり、日本側の問題意識は深刻だ。日韓の経済界が進めてきた人材面での関係強化が滞っているほか、日本から韓国への投資にも陰りが出ている。背景には「韓国製造業の空洞化」があるとの指摘もあり、日韓関係強化のためには新たな手段が必要だとの声も出ている。
“官製運動”の見方も
「今回は様相が違う」
日韓経済人会議に参加した日本側の関係者たちは、一様に現在の日韓関係の悪化に不安を強めている。
韓国では、日本産ビールの販売量が8月に約10年ぶりに首位から転落し、13位に落ち込んだ。8月の日本車の新車販売台数も前年同月比で57%減少し、各社は生産を絞り込む。
若者で賑わうソウル繁華街の明洞のカジュアル衣料品「ユニクロ」の店内は閑散さが目立つ。食品などが卸の段階での返品されたり、コンビニエンスストアの本部の意向が各店に反映されているという。
韓国での日本製品の不買運動は過去にもあった。日本の歴史教科書問題をめぐって韓国が反発した2001年などが代表例だ。しかし、今回は会員制交流サイト(SNS)で情報をやりとりする若者らが反日に敏感に反応し、文在寅政権の支持基盤である労働組合が暗躍し、いわば「官製不買運動」との見方もある。ある財界首脳も「専門家によると反日デモに毎回同じ面々が参加しているとの指摘がある」と話し、組織的な動きを問題視する。
9月6日には、ソウルと釜山市議会が一定の日本企業の製品の購入を制限する条例を可決。全国への広がりが懸念されたほどだ。実際には「さすがに国益に反するとの自治体内部の意見もあり、ソウルも含め収束しつつある」(政府関係者)と最悪の事態は回避されたが、政治面での関係改善が見通せない中、経済界は懸念を拭いきれずにいる。