□スパイキー代表取締役・栢森秀行
「AI」搭載を掲げるホールコンピューターが相次いでリリースされるなど、遊技業界においても人工知能の活用が脚光を浴びつつある。それらの性能に関する個別評価はさておき、現在、世間ではやっているのは近似値を効率よく得るための機械学習であって、決してコンピューターが認識をもとに思考を行っているわけではない。ただ、新しいテクニックとして有効に使えるので、業種を問わず世間に普及することは良いことだと考える。なお、あくまで計算によって導かれる学習であり結果であるため、上手に活用するのにはコツがいる。今回はそれについて述べてきたい。
データは多い方が良いが、機械学習に適した適切な解像度があり、たとえば外気温を0.1秒ごとにサンプリングするようなことはまったく無駄で、限りあるメモリとCPUを浪費するだけだ。また、明らかな依存関係がある複数のデータはまとめるべきである。
たとえば、時間軸と値域を調整することで強い相関関係が見られるようなデータを複数入力することは学習効果を下げる。加えて、指数的に変動するデータは対数を取ってリニア化しておくべきであり、自然現象はそのようなデータが多いので気を付けなければならない。なお、パラメータ数とネットワークの段数、収束手法の組み合わせは多数あるので、試行錯誤して最適な学習効果が得られるものを見つける必要がある。
また、手作業で異常データと思われるものは丁寧に取り除いたほうがより良い学習効果を得られる。結局、無数のデータをサンプルとして大量の人員を投入してようやく使い物になるのが、今のAIと呼ばれるものである。つまり、現在AIと称するものは主に機械学習であり、大量のサンプルを膨大な時間をかけて収束させ、最適化したパラメータの集合体へデータを入力し、既存の技術より高い確率で近似値を導き出せる手法にしかなっていない。
パチンコホールにおいてもそのことを念頭に置き、業務の効率化をはじめ、より有効な機種選定や集客を実現するためのサポートツールとして機能させることをお勧めしたい。
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【プロフィル】栢森秀行
かやもり・ひでゆき 1968年大阪府生まれ、愛知県育ち。京都大学大学院情報学研究科修了後、ダイコク電機入社。SIS分析の拡充、CR事業立上げなどを行い2012年代表取締役社長に就任。退任後転職し18年よりスパイキー代表取締役。