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関電金品受領問題 根深い不祥事体質 電力業界の信頼失墜 再稼働遠のく懸念も

 関西電力の金品受け取り問題は、これまでにも原子力発電所をめぐる問題と改善の取り組みを繰り返してきた電力業界の不祥事体質の根深さを浮き彫りにした。業界が進める原発の再稼働には設備の安全確保に加え、地元の理解と信頼が大前提。そのなかで今回の問題は、立地自治体からの信頼を失い、再稼働への取り組みを無にしかねない。

 「小さな事故の事実でも公表するように、ていねいな情報開示に務め、信頼回復を第一に考えてきた。今回の問題で地元が不信感を持てば、これまでの努力は無駄になる」

 電力大手の幹部は関電の問題が自社にも影響を与えることを懸念する。原発をめぐる不祥事のたびに信頼回復に取り組んできただけに、関電の問題が与えるショックは大きい。

 九州電力で平成23年に発覚した「やらせメール」問題では、九電の原子力部門の社員が玄海原発(佐賀県)の再稼働をめぐる県民向け説明会に際し、本社や子会社の社員に一般市民を装って再稼働を支持するメールを送るように依頼していたことが発覚。真部利応社長らが事実上の引責辞任に追い込まれた。

 九電はその後、コンプライアンス(法令順守)行動指針を改定するなど、信頼回復に取り組み、玄海原発など計4基の再稼働までこぎ着けた。

 こうした努力の積み重ねで、国内では現在、九電の4基を含め計9基の原発が再稼働している。これに続き、原子力規制委員会の審査に合格した東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)の6号機、7号機など6基の原発が再稼働に向けた取り組みを進めている。

 しかし再稼働に不可欠な地元との合意形成には苦心しているのも実情で、今年再稼働する原発はゼロの見通しだ。電力業界関係者は「ある社で不祥事や問題が起きれば、他でもやっているのではと、勘ぐられるのが、この業界」と、自嘲気味に話す。それだけに、1社が問題を起こせば業界全体の信頼を失うことを、「経営トップだけでなく、業界全体が意識しなくてはならない」と指摘している。(平尾孝)

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